Fate

□出会った頃
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四人が再び部屋の中へ入ると、男性陣は既に各自席についていた。引き継ぎファイルに目を通していたり、パソコンを操作していたり、こちらの存在は完全に無視か。そんなことを思っていると、カーディガンを着た男の子が資料から顔を上げて声を掛けてきた。


「会議は終わったの?」

「!うん、終わった終わった!」

「そっか」

「で、とりあえず自己紹介しませんか!?ってな感じに!」

「良いんじゃないかな」


そう言って軽く微笑む彼に女性陣は感動さえ覚えた。久しぶりに人に優しくされた気分だ。安心した表情を浮かべる由衣に、しおりは「彼が颯ちゃんっすよ」と肘で合図した。何度か廊下で見かけたことがある。彼が森山君、自分のパートナーとなる人…由衣はまた顔を強張らせた。


「何緊張してんだよ由衣」

「しっ、してないもん!えっと…書記担当になりました、上原由衣です!よろしくお願いします…!」


恵に図星をつかれた由衣はドギマギしながらも言うべきことを詰め込んだ。選挙で全校生徒の前で挨拶したあの時より緊張するのは何故なんだろう。


「よろしく、上原さん。同じく書記担当になった森山颯太です」

「は、はい!…あの…!足引っ張っちゃうかもしれないんですけど…」

「大丈夫だよ。お互いさまってことで」

「ありがとう…!」


優しい言葉に由衣はパァッと効果音がつきそうなほど顔を明るくした。さっきは苦手なタイプかもなんて思ってごめんなさい。実際はすごくいい人だ!

そんなことを考えていると、誰からか「間抜け顔」と言われた気がした。由衣が自分のことを指しているのだと気付く前に「こら、カズ」という颯太の声が聞こえた。やはり聞き間違えではなかったようだ。
皆で声のした方を振り返ると、明らかに一人だけやる気の無さそうな男子生徒がソファーの上に寝転がっていた。生徒会室に似つかわしくないその光景に恵は「何だあいつ」と呟いた。しおりは少し驚いた表情を浮かべた後、ナツの袖を引っ張った。


「えとえと…あれが柴ちゃんっす」

「…知ってる。でも話と違う」

「おっかしいなぁ。双子の弟かも!?」

「…………」


笑ってごまかすしおりの顔には戸惑いも含まれていて、冗談を言っているようには見えなかった。もっとも、彼が双子の弟だなんてことはありえないのだが。


「柴ちゃん!自己紹か」

「柴崎和、会計。日野って誰」


しおりが喋り終わるより先に和が言った。同じく会計になったナツは一歩前へ出る。
こんな人が自分のパートナー?頭が良かろうが人気があろうがこの態度はいただけない。先が思いやられるという言葉はこういう時に使うのだろうか。


「…私。日野ナツ」

「ふーん」


体勢はそのままに目線だけをこちらへ動かす和。そこで初めて彼と目が合うが、そこからは何も読み取ることができない。
何なんだろう、暖かさを全く感じない、体が冷えていくような感覚。それなのに引き込まれて逸らせない、不思議な目をしている。


「柴ちゃん、グレちゃったんすか?」

「カズは元からこんなんだよ」

「けっ、お前の情報も当てになんねーな!しおり」

「ありりー?」


しおりは不思議そうに首を傾げた。






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