Fate
□出会った頃
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「…………」
「…………」
広い生徒会室に沈黙が流れる。男子四人、女子四人、入り口付近で向かい合ったままのこの状況。言葉を発するわけでもなく、かと言って微笑みかけるわけでもなく、殺伐とした空間にただ時計の針が時を刻む音だけが響いている。
「あ、ははー…ちょっとタイムね審判!」
この空気に耐えきれなくなり、大声を上げたのは四人の中のムードメーカーしおりだ。タイムという言葉に、入り口から一番近い位置に立っていたナツが黙って扉を開ける。廊下に出て行く四人を見ても、男性陣は表情一つ変えることはなかった。観察されている、そんな気がした。
Story.21 出会った頃
「…………」
「い、息が詰まりそうだったねぇ…」
部屋から出てすぐ大きなため息をつく由衣。まだ一言も会話をしていないのに、自分達が何か悪いことをしてしまったのではないかと思わせる程の空気感。見えない壁に圧迫されてしまったようだ。
「…歩み寄らないと」
「あ?何でこっちからンなことしなきゃいけねーんだよ」
「そんなこと言わないでさぁ…ナツの言う通り、歩み寄れば向こうも…」
「心開いてくれるかもしれないっすよね!」
「…気に入らねぇ。次世代だか何だか知らねーけど、チヤホヤされて調子こいてんじゃねーか?」
「そ、そんな風には見えないけど…」
「とりあえず、喋りやすい人から攻めて行こうではないかっ!」
「…そんな人いるの」
しおりの言葉にナツは怪訝そうな顔をした。どう見ても取っ付きにくいような人ばかり。向こうはこちらに心を開く気など毛頭なさそうではないか。だがしおりはふふんと得意げな顔を見せた。
「柴ちゃんと颯ちゃんっす!」
「どいつだよ」
「入り口側に立ってた会計と書記の二人!一年の時クラス一緒だったから、性格はある程度わかるのだ!」
そう言って胸を張るしおり。一年の頃、恵ら三人がA組だったのに対し、しおり一人だけがC組だった。中学の頃から仲の良かった三人と離され、さすがのしおりも最初の内は落ち込んでいたのだ。彼女の性格上すぐ打ち解けてはいたが。
「ポーズ決めてねーでさっさと言えや。どんな奴らなんだよ」
「おうよ!柴ちゃんはザ・優等生って感じなんだけど、堅いわけでもないし、フレンドリーだった!」
「…そういや一年の時もそんなこと言ってたな、お前」
「良かったね、ナツ!しおり、書記の森山くんはー?」
「颯ちゃんは優しい感じっすね!明るくて男女問わず人気があったよ!絡みやすさでは一番ではないかと!」
「良かったぁ…」
次世代四人の噂は一年の頃からちょくちょく耳に入ってきてはいたが、そこまで気に留めていなかった。二人の情報を聞き、ホッとする由衣と表情を崩さないナツ。
「つーかしおり!てめぇ同じクラスだったならさっき喋れたんじゃねーのかよ!何一緒になって黙りこくってんだよ」
「雰囲気にのまれちまったのさ!」
アハハと笑うしおりに殺人タックルをかます恵。とても痛そうだ。
「痛い!タイム!」
「あたしにタイムは通用しねぇ!」
「ここで争うべきではないのさ!本当の敵は、この扉の向こうにいる!」
敵って言っちゃってるし。少年漫画の主人公のようなポーズを決めるしおりに、恵は最後の一発を食らわせた。
「いたーい!」
「もうやめよう。時間の無駄」
「うん…あんまり待たせちゃ悪いしねぇ…」
「うんうん!とりあえず今日は自己紹介済ませて、さっさと解散するのがいいと思うっす!」
三人の言葉に恵はふんと鼻をならし、乱暴にドアノブを掴んだ。
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