Fate

□成長
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「おい!」


俊二の言葉を受け仕方なく生徒会室へやってきた恵。扉を蹴り開けると、寝ぼけモードの和がソファーから顔を上げた。向かいの席にはナツの姿もある。


「…ふぁあ〜…ちっ、なんだ有川さんか…」

「テメー柴崎っ!今舌打ちしただろ!」

「柴崎くんはしおりだと思ったんだと思う」

「あ?…え、いやその前に、何でお前ジャージなんだよ」


全身ジャージに身を包んだナツを見て、恵はツッコミを入れた。


「ジュースをこぼすという失態を…」

「珍しいこともあるもんだな。…じゃなくてそう、しおりだしおり!」


恵は話をしおりに戻した。ちょっとしたことで話が脱線してしまうのは、恵たち四人の悪い癖だ。


「あの子は今行方不明。一ノ瀬くんが戻ってきたら皆で探すことになってる」


そろそろ20分…と部屋にある時計を見ながら、コップを片手にナツが呟く。二人の落ち着き具合に恵は少し脱力した。


「一ノ瀬なら既にしおりを探しに行ったぞ。お前ら呼んでくるよう頼まれたんだ」

「え、一度戻るって言ってたのに」

「よく分かんねーけど、手がかり掴んでるっぽい感じだったぞ」

「…そう」


ナツはその言葉を聞き、コップを机に置いて椅子から立ち上がった。


「また倉庫にでも閉じ込められてんのかもしれねぇ。見つけ次第しばくぞ」

「…うん」

「柴崎!お前も早く来いって!」


恵がソファーに向かって叫ぶと、和はダルそうに腰を上げた。そして扉へ向かってゆっくりと歩いていく。


「…これでトイレに籠ってたとかだったら蹴り飛ばすから」

「お、おい!どこ行くんだよ」

「一緒には探さない」


そう言って和は二人の間を通り抜け、部屋を出て行った。


「ったく…」

「恵、早く行こう」









Story.19成長




「も、もう一度言ってもらっていいっすか?」

「あんた耳も悪いの?生徒会を辞めろっつってんの!!」

「えぇえ!?幻聴じゃなかった…!でもそれだけは無理な相談だよッ」

「何ですって?」


しおりにはこの状況が未だ理解できていなかった。いきなり屋上に呼び出され、何の用かと思えば「生徒会を辞めろ」の一点張り。少しずつではあるが、やっと皆と信頼関係を築いていけそうなところまで来ているのに。しおりにとってそれはあまりに酷な言葉だった。


「とりあえず、理由が聞きたいっす!悪いところは直すし!!」

「んなことしなくて良いわよ。つーかどうでもいい」

「ええ。辞めてさえくれれば」


そう言って睨んでくる彼女たちの目は、とても冗談を言っているようには見えない。本気だ、本気で辞めてほしいんだ。


「生徒会はね、本来の形態に戻るべきなのよ」

「そうそう。インチキして、新体制まで作って…厚かましいことこの上ないんだけど!」

「へ…?インチキ?」


頭にハテナマークを浮かべるしおり。それを見た女子生徒はさらに目つきを鋭くし、声を荒げた。


「とぼけんな!私達聞いちゃったんだから!」

「どうせ最初から次世代に近づきたかっただけなんでしょ!?」


次世代、一年の頃特によく耳にした言葉だ。文武両道の上女子からの圧倒的支持により、次の生徒会を担うこと間違いなしとされていたメンバー…
つまり現生徒会の男子役員四人を指す言葉だ。






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