Fate

□自覚
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「日誌にサインお願いしますっ」


「します」


「おぉ、上原に日野。まだ授業残ってるのに早いなぁ」


「放課後は生徒会あるし…早めに持ってきちゃいました」


「あー、そういえばお前たちは生徒会所属だったな」



昼休みの職員室。
日直の由衣と付き添いのナツは、担任の長谷川に書き終えた日誌を見せに来ていた。
長谷川は食後の紅茶を啜りながら日誌にサインをする。



「よし、OKだ」


「「ありがとうございます」」


「あ、そうだ。戻るついでにこのプリント隣のクラスに持って行ってくれないか?」


「…何で」


「五限目に2のBの授業で使うんだ。量が多いから手伝ってくれるとありがたい!」



ヘラヘラと笑顔で頼み込んでくる長谷川。



「あ、はい、わかりました」


「先生、貸し一つ」


「はっはっは!恩に着るぞ」






Story15.自覚






「はっせープリント好きだねぇ」


「もっと教科書に頼ればいいのに」


「ねっ。あ…着いたよナツ」



目的地の2年B組に辿り着く。
由衣はプリントを片手に持ち替え扉を開けた。
一瞬間を置いてから中に入ると数人がこちらを振り返ったが、特に気にせずおしゃべりを再開し始めた。



「由衣、教卓に置いておこう」


「あっ、うん、そうだね!」



半分に分けたプリントをドサッと教卓の上に置いた。
木目調の平面が白で埋まる。
ナツが一息ついて辺りを見渡していると、ちょうど後ろの扉から教室に戻ってきたところの和と目が合った。



「(あ…)」


「………」



和は自席に座った後、真顔からいつもの少し意地の悪い笑顔に表情を変え手を振ってきた。



「(…う。これじゃ見つめてたみたいじゃない)」



(ね、こ、か、ぶ、り、め)



何だかモヤモヤして口パクでメッセージを送ってみる。
すると和は片手を振ったままアッカンべーのポーズをしてきた。



「アノヤロウ」






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