Fate

□ただの生徒会長
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「よっ、と」



恵は校舎裏にあるゴミ回収場に膨らんだゴミ袋を投げ入れた。
本日日直が回ってきた恵は日誌など細かい作業は相方に任せ力仕事を担当していたのだ。
そう言うと聞こえは良いかもしれないが日直が任されている力仕事などゴミ捨てくらいなので彼女の任務はゴミ袋を投げた瞬間完了していた。
教室へ戻るため踵を返せば前方に見慣れた姿を見つけ、迷った挙げ句声を掛けてみることにした。
彼は腕を組んで空を見上げている。



「一ノ瀬、何してんだ?」

「…有川か。雨が降りそうにもないと思ってな」

「降らない方がいいじゃねーか」

「今朝天気予報を見て傘を持って来たのだが、無駄になったようだ」



突然声を掛けた恵に対し驚くこともなく俊二は淡々と答えた。
特に悔しがるような様子も無いので単に空を眺めていたかっただけなのではないかと恵は思った。
しかしその直後この男は中々のポーカーフェイスであったことを思い出す。
恵が黙っていると「ボーッとしていて会議に遅れるなよ」などという嫌味が聞こえてきたので何か言い返そうと思ったがあまり良い言葉は思い付かなかった。



「…そういや今日お前のクラス校庭で体育だったろ。窓際の女子がキャーキャーうるせぇんだよ。次から体育館にしろ」

「無茶を言うな」

「まぁそん中にしおりも居たんだけどよ」

「………」



少し黙った後「余所見できる余裕などないはずだがな」と呆れ顔で俊二が言った。
それに関しては恵も全くの同意見で、だから馬鹿なんだろうなと付け加えた。



「でもよ、あいつ小テストの点数微妙に上がってきやがったんだよな」

「そうか」

「お前のおかげだとか言ってる」

「…そうか」

「またテスト前に勉強教わる気でいるぞ、しおりの奴」



そう言って俊二の顔を見れば特に表情を変えるわけでもなくまた「そうか」と答えた。
さっきからそれだけかよ、と恵は思った。
きっと成績の良い俊二にとってはしおりに少し時間を割いたところで自分の点数には影響しないのだろう。
そう考えると恵は理不尽にイラッとした。
いつでも余裕のある目の前の男子生徒会長に対して。



「…お前みたいに頭いい奴が万年赤点に勉強教えるって苦痛じゃねぇの?」

「疲れるのは確かだな」



何だその否定とも肯定とも取れない微妙な言い方はと思ったが俊二がこんな言い回しを選んだということは前者なのだろう。
恵は何故か益々イライラが増した。





14.ただの生徒会長

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