Fate

□表と裏
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「由衣、真剣な顔で何見てるの」

「…………」

「由衣…」

「…………」



今は昼休み。
やっと昼食の時間になったというのに由衣は先ほどから窓に張り付いたまま。
声をかけても反応がない、心ここにあらずと言ったところだ。
私は由衣の隣に並んでその幸せそうな目線の先を追ってみた。
…あぁ、なるほど…



「森山くん、サッカー楽しそうね」

「!わっ、ナツ…!」

「おかえり」

「えっ、た、ただいま…」



やっと意識が帰ってきた由衣に軽く微笑む。
すると気まずそうに顔を逸らされた。
何やら照れてるらしい、可愛いな。



「あっもうお昼だよね。恵としおりは?」

「購買行ってる」

「そっか…」

「……球技大会以来、森山くんと二人で話した?」

「えっ?あ、ううん…中々タイミングが…」



再び話を校庭にいる彼に戻すと由衣は少し驚いた後困ったように笑った。



「でもね、こうやって森山くんのこと見てると…もう大丈夫なんだろうなって思う」

「…そう…詳しいことは知らないけど、でも最近は由衣も元気出たみたいで安心した」

「えっ、そうかなぁ」

「うん」

「……あ、あのね、ナツ…」



少し緊張したような声で呼ばれてそちらを見ればやはり緊張したような顔をしていた。



「どうした」

「うん、私ね……」


「ただいまー!!」



由衣が再び何か言いかけたところでしおり達が戻ってきた。
相変わらずタイミングが良いのか悪いのか。
いや悪い、後でデコピンの刑だよ。
まぁ何が言いたかったのか大体想像はつくけれど、由衣の口から続きを聞きたかった。
仕方ない、次の機会を待つか。






story13.表と裏






「調理実習のクッキーもう食っちまうか?」



いつも通り一番乗りで食事を終えた恵が言った。私たちのクラスは3・4時間目の家庭科で調理実習を行ったのだ。
騒いだり脱線したりで私たちの班はチャイムが鳴ると同時に何とか課題のクッキーを作り終えたのだった。



「えーッ汗と涙の結晶食べちゃうのかよぅ」

「食いもんなんだから食わなかったただのゴミだろ」

「せめて宝の持ち腐れと言って欲しいッス!」

「いつ食べても一緒だと思う」



私が言うとしおりがじっとこちらを見つめてきた。
な、なんなんだ…



「ナツ、あげないのかい?」

「何を」

「もち、クッキーを」

「…誰に」

「柴ちゃんに」

「…………」



何を言い出すのだろう。






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