Fate

□仲良くなりたい
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「会長さまーっ」


「足に纏わりつくな」


「…………」


「…カズ、カメラを構えるな」


「あ、バレてた?」


「…いい加減全員席につけ」



土曜日の昼下がり。
授業も終わり、皆生徒会室に集まっていた。



「座んのはいいけどよ、やることねーだろ」


「えっ、そうなのかえ?恵」


「だって入学式も球技大会も終わったし、春のでけーイベントってこんくらいだろ?」


「イベント事が全てではない」


「でもでも会長さま!たまには休息も必要だと思うよ!ここはパーッとみんなで遊びに行こうよ」


「みんな?」



しおりの言葉に由衣が不思議そうに首をかしげた。



「もちろんこの8人でだよッ」


「えっ…それはちょっと想像つかないかも」


「静かにしろ」



俊二が丸めた書類で机をポンポンと叩いた。



「会長さま」


「仕事はある。それに外を見てみろ」


「外?」



しおりが窓を覗き込むより先に、ガッシャーンという大きな音が近くで鳴り響いた。
言うまでもない、雷がおちた音だった。
由衣が小さく悲鳴をあげるが、その声もまた雷鳴により消し去られる。



「ひどい天気ですね」


「ううぅ…朝は晴れてたのにぃ。いいもん、日を改めるもんねー!」


「少しは雷に動じてくれたら良いのに」


「そういうナツこそ!あっ、」



そう言ってしおりは何やらバッグの中をガサゴソと漁り始めた。



「?」


「あった、ジャーン!これっす!」


「それは…」



しおりがバッグの中から取り出したのは、球技大会の賞品であるデート券だった。



「グループでもオッケーって決まりだったよね!?これさえあれば、この全員で遊びに行くことも不可能ではないっ!」


「…なぜお前がその券を持っている」


「やだなぁ会長さま。女子バレーの部でうちらのチームが優勝したからだよ」



しおりは鼻高々と言った。
活躍したのは恵や運動部のメンバーたちだが、ここはノータッチで進めていこう。



「てっきり準優勝のチームに譲っていたのかと思いましたよ」



俊二らのチームがバスケの部で優勝した際、賞品を辞退していたのを見てしおりはカッコいいー!と叫んでいたのだ。



「そうそう。だからうちらも生徒会役員として!カッコよく真似して辞退しようと思ってたんだけどさ…」


「断ってきた。情けはいらん"と言って」


「…随分男前なチームだね」



ナツの言葉を聞いて颯太は苦笑いした。



「ねっ、断られたわけだし、うちが使ったっていいよね。今日は無理でも後日ってことで!」



そもそもデート券には拒否権がない。
最初に生徒会で決めたルールだ。

笑顔で仁王立ちするしおりに一同は黙り込んだ。






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