Fate
□二つの生徒会
1ページ/5ページ
私立堂朋学園高等部前。景色はすっかり春模様。穏やかな日差しの中で、うぐいすの鳴き声が……
「間に合ええええぇー!」
聴こえてくるはずもなかった。
story.1 二つの生徒会
「恵、も、ダメ……走れないよ」
三人に遅れを取りつつ、必死でついて行く女子生徒。辛そうに弱音を吐くのは女子書記の上原由衣。
「良いから、今は黙って走れ!」
反対に先頭を猛スピードで走る女子生徒。言葉遣いが荒いのはいつものこと、女子生徒会長の有川恵。
「もう朝会始まってるに一票!」
恵の後を追うように二番目を走る女子生徒。ベタに焼き立ての食パンを咥えている、女子副会長の葉月しおり。
「…時に諦めも必要」
無表情で三番目を走る女子生徒。汗一つかかずに淡々と話すのは女子会計の日野ナツ。
「朝会だからこそ諦めるわけには……! いかねぇって」
スピードを上げた恵が手を伸ばし、体育館の扉を勢いよく開けた。集まっていた全校生徒が一斉に後ろを振り返る。
「セ、セーフか!?」