Fate

□それぞれの関係
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校庭でサッカー部の手伝いをしているはずの颯太からメールが届いた。大会ともなると忙しいイメージがあるのだが、違うのだろうか。そんな中悠長に携帯を弄れるような性格ではないはずだが。涼介は画面に表示された新着メッセージを開いた。


「颯太から?」
「…カズ、音もなく背後に立つのは止めてください。びっくりするので」
「してないじゃん」
「一応してます」


悪意のある声のかけ方をして来た和から目線を液晶画面へと戻し、メッセージを読む。ちなみに涼介達には携帯を弄る余裕がある。教師から頼まれた雑用を終わらせたところなのだ。


「昼食の差し入れがあったらしいですよ。まだ時間が掛かるみたいですね」
「ご愁傷様」
「人数は足りているので先に帰宅していて欲しいとのことです」
「そ、じゃあ帰ろう」
「僕とカズに一斉送信してあります。貴方も返信しておいてくださいよ」
「携帯忘れた」


本当かどうかは分からないが、とりあえずそうですか、とだけ答えておいた。和が相手だと変に突っ込んでも無意味な労力を使うだけだ。


涼介は後方で雑談しているしおりとナツに目をやった。会長組と書記組は大会の手伝い、副会長組と会計組は職員室での手伝い。ただ生徒会だという理由だけで日曜の朝っぱらから学校に借り出されたのだ。正直少しだけ疲れた、しおりの相手をするのが。



story34.それぞれの関係



「えー!あっちのチームお昼出たんすか!ズルイ!」
「…確かに、お腹すいた」
「ねーねーお三方、このまま帰るのも味気ないし、ごはん食べに行こうよ!」


しおりに関しては予想通りの反応だ。颯太から届いたメールの内容を伝えると、しおりは騒ぎだしナツはお腹をさすりだした。


静かにして下さい、そう言おうとした瞬間、良いんじゃない、という予想外の言葉が聞こえて来て思わず声の主の方を振り返ってしまった。彼女たちも同様に和の方を見ている。


「柴ちゃんが乗り気なの珍しいっすね!」
「乗り気じゃないし。買い物ついでに昼食べて帰ろうと思ってたから」
「ほうほう!何を買おうと?」
「炊飯器」
「……マジっすか?」
「嘘」


それだけ言うと和は三人を置いてさっさと歩き出してしまった。結局何を買おうとしているのか全く分からなかった。謎だ。しかしこのまま帰ってしまえば自分のことを棚に上げて「薄情者」などと悪態をつかれるのだろう。仕方ない。


「織田くん、行こ。はぐれる」
「…そうですね」
「どこ行くんすかねー!」
「電化製品…」
「何すか?ナツ」
「炊飯器って言ってたから、ヒントなんじゃないかと思って」
「ほほう、じゃあ一番近いところでいうと駅前のショッピングモールかな!」


ナツは凄い、というより強い。涼介は和から発せられる言葉の意味を真剣に考えことなどなかった。考えたところで分からないのだから。しかし彼女は、必死で分かろうとしている。分かりたいんだろうな。


数メートル先に和がいて、しおりが大きく手足を振りながらその後に続く。ナツは出遅れた涼介が歩き出すのを無言で待っていてくれている。同じグループだとは思えない、奇妙な一列だ。
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