Fate
□否定と肯定
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「…恵?」
「!ナツ…」
暫くその場にへたり込んでいると、そこへ先程まで名前が上がっていたナツが姿を現せた。全く、都合が良いのか悪いのか。恵は気まずそうに顔を逸らした。ナツは気にせず中腰になり、顔を覗き込んでくる。
「こんな所に座り込んで…」
「あたしの勝手だろ…。それより、何か用か?」
「名前呼ばれた気がして」
「…お前地獄耳か?」
恵が驚いたような顔をすると、ナツは表情を変えずに首を傾げた。第六感というやつだろうか。先程の和との会話内容は聞かれていないようで、少しほっとする。
「わりーなナツ」
「…何が」
「性格のこと言わねーって約束だったけど、言っちまった」
「………そう」
これだけで何のことかすぐ理解できるということは、やはりあの時の言葉は真剣だったんだな。ナツは驚くこともせず、表情一つ変えようとしない。初めから期待されていなかったのだろうか。だとしたら悲しいものがあるが。これでも我慢した方だ。
「あたしさ、最近自分がよく分かんなくて苛々してんだよ」
「………同じ」
「お前は……」
「?」
「いや…そろそろ戻るわ!」
恵はそう言うとその場を立ち上がった。中腰になっていたナツもつられて姿勢を戻す。
「おめーはどうする?」
「……………」
「…柴崎か?」
「…うん。そろそろ会議始まるし」
「あいつなら外出てったぞ…」
「…そう」
別に言わなくたってナツなら何となく見当をつけているんだろうな。ならばここへ連れて帰る役目は彼女に任せよう。まあ頼まれたって自分は行かないけれども。そんなことを考えながら恵は玄関へ向かうナツをぼんやりと眺めた。
「行ってくる」
「…おう」
「…………」
「…あ、ナツ」
「…?」
「…お前さ、あいつのこと勘違いしてる部分もあると思うぞ」
恵の言葉にナツの瞳が少しだけ揺れた。
「……分からない部分は多いけれど…勘違いなんて…柴崎くんは良い人」
「だーから、良い悪いじゃなくってよぉ。なんつーか…気軽に深入りしねぇ方がいいっつーか、闇がでかそうっつーか…あたしの野生の勘が…」
「…ありがとう。でも、気軽な気持ちではないから」
そう言って軽く微笑み、ナツはコテージの外へと向かった。そう言われてしまうともう何も口出しはできない。これはナツ自身の問題だ。
「はあ…」
恵はもう一度大きな溜息をついた。
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