Fate
□天邪鬼
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何その告白もどき。目の前にいる友人にばっさりと切り捨てられ、颯太が肩を落としたのが分かった。五時間目ももう始まるというのに、あの二人は一体何をしているのか。俊二は斜め前の席で何やら話し込んでいる、颯太と和のことをぼんやりと眺めていた。
何とも言えない表情を浮かべる颯太に対し、表情も姿勢さえも崩さず真っ直ぐ彼の方を見据える和。かなりの温度差を感じた。
「……どう思う?」
「気持ち悪いと思った」
「カズの気持ちを聞いてるわけじゃないよ」
「あ、そう」
「あー……何であんなこと言ったんだろ。あの時の俺に問いかけたい」
悩みは複雑で深刻なようだ。しかし、出会った当初のような暗く重いものを抱えている様子はなかった。誰よりも大人に見えて、他人のことを第一に考えている颯太が彼自身のことで悩む姿は中々に珍しかった。同い年の俊二が言うのもおかしな話だが、周りの人間に、教室に溶け込んでいるような気がしたのだ。彼はあんなにも幼い表情を見せていただろうか。
「どうしました? 俊二」
「涼介か。いや、何故か今日は颯太が幼く見えてしまってな」
「はあ……颯太は元々、我々に比べ童顔な方だと思いますが」
「顔の話ではないのだがな……」
俊二の言葉に涼介は、不思議そうな表情を浮かべた。
story42.天邪鬼
本日の授業が全て終了し、放課後に用事がある者も居なかったため久しぶりに男子四人揃って生徒会室を目指す。すると、後ろからドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。壁の貼り紙が見えないのだろうか。振り返ると同時に大声が響いた。
「会長さま! 織田っち! 颯ちゃん! 柴ちゃん! お揃いで!」
「お前か……葉月。一々その馬鹿げたあだ名を叫ぶな」
「やっと追いついたー! だって叫ばなかったら止まってくれなかったっすよね!」
「……もう一つ、廊下を走るな」
「スルーは寂しい!」
全く、もう少し生徒会役員としての自覚を持って欲しいものだ。先程よりも歩くペースを落とし横を見ると、しおりが呼吸を整えていた。
「葉月さん、今日はお一人ですか?」
「んーん! もうちょい後ろに他の三人も居るよ!」
「そうですか。久しぶりに全員揃いますね」
「うん!」
嬉しそうに頷くしおりを確認した後、俊二は後ろを振り返った。ここから少し距離があるが、確かに女子役員三名が並んで歩いている姿が目に入る。由衣はどこかぼんやりしているようにも見えたが、顔色は明るくなった。書記二人の様子を見る限り、話し合いは上手くいったのだろう。自身が安堵の表情を浮かべてることに気付いた俊二は、それを他の者に気付かれる前に生徒会室の扉へと手を掛けた。