ようこそラメールカフェ!

□日曜の誘い
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「日曜?」

「おん、来週の」

「シフト表見ないと分かんないかなぁ。自分、結構切羽詰ってるんで。土日は大概バイト入れちゃってて」

「まだ入ったばっかやし、仕事に燃えとるわけやな」

「いえ、お金に燃えてるんです!」

「…あー…うん、正直でええと思うよ」


両手を握りしめて語る花音に拓真は苦笑いした。

まあそうか、ここのスタッフは皆本業が学生になるわけだし。仕事に真面目なキッチンコンビでさえタイムカードを切れば店のことにノータッチだもんな。渚は仕事上がった後も自主的に柊の傍に居ることが多いが。彼女は「めんどくさい」「眠い」が口癖の割に、不真面目なのか真面目なのかよく分からない。


「拓真くん?どうかしたの」

「あ、いや、何もないよ」

「日曜がどうしたってー?」

「…うわ、渚さん」

「うわって何、拓真。失礼な」


カウンターに顔を出したのは渚だった。日曜というフレーズだけで何のことか悟ったのか、若干呆れ顔だ。キッチンに居たのではなかったのか。


「デートにでも誘ってたのかぁ?」

「目の前に可愛い女の子がおんのに、誘わんかったら男ちゃいますわ」

「あたし口説かれたことないんだけど?」

「あはは…まあ運命感じた相手限定っちゅーことで!」


そう言って人懐っこい笑顔を向け誤魔化す拓真。その様子に渚は溜息をついた後、何か思いついたような顔をする。


「そういやこの前あたしの友達が店来てくれたんだけどさ、あんたに口説かれたって言ってたよ」

「えぇ!?どの子やろ、あの子はタメやったし、ならショートヘアの…」

「…まあ冗談なんだけど」

「えっ!?何でそんな冗談言うんすかぁ、ボケるタイミングがあんまりや!」

「あんたが墓穴掘ったことによって真実になったけどね」

「うっ…」


拓真は気まずそうな顔をした後、ハッとして花音の方を振り返る。想像通り、ジロッと軽蔑の意を込めた目線を送ってきている花音と目が合った。ヤバい、やらかした。


「拓真くんには一体何人の『運命の人』がいるのかな?」

「いやーえっと…」

「ま、そうだよね。拓真くんモテるだろうし、私なんか本気で口説いてくる訳ないよね」

「あ、あの花音ちゃん…」

「拓真くん!やっぱり自分、日曜はお金に燃えさせていただきます!」

「ま、待ってや花音ちゃん…!」


花音はきっぱりとそう言い放ち、カウンターを後にした。残されたのは項垂れる拓真と気まずそうに苦笑いする渚だけだ。さすがに悪いことをしてしまったと思ったのか、渚は拓真の背中をポンと叩く。


「ま、まあ挽回のチャンスはあるって」

「…当然や」

「え?」

「絶っ対落としたる!!」

「…………」


涙目で拳を握りしめる拓真を見て渚はこれ以上何も言わないでおこうと決めた。これは恋愛をゲーム感覚で楽しんでいるかに見える彼なりのプライドだろうか。花音は見事ラスボスに選ばれたわけだ、おめでとう。そんな適当なことを考えながら渚は拓真を放置して自身もカウンターを後にした。






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