日常話
□男性職員が来た日
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私の職場は業務上女性が多く、男性の職員はいなかった。
そんな時、面接に来た男性が見学にやってきた。
結果は合格で、翌週くらいから働きにきて、辞める事なく、早数年。
今では、盛上げ隊長な彼だが、初めての印象は『キモい』だった。
別に容姿が悪い訳でもなく、立ち居振る舞いが悪い訳でもない。
普通のスーツマンだった。
が、挨拶にやってきた彼からは『薔薇の香り』がした。
キモ!
ダンディ中年ならともかく、熱血系青年から出てくる匂いではない。
あと、ダンディ中年と薔薇の香りについては、私の趣味だ。気にしないで欲しい。
当時の私は猫かぶりで、毒吐きキャラではなかったし、まぁ今でも初対面の人間に「キモい」と言う神経は持ち合わせていない。
よって、その場は笑顔でごまかした。
数ヶ月後、化けの皮がはがれ始めた私は、疑問に思っていた事を尋ねてみた。
「いやぁ、初めて会ったときは、薔薇の香りのする男が来た!と皆で盛り上がりましたよ」
「?何で」
「だって、薔薇の香り似合わないじゃないですか。どんだけ勘違い野郎かと」
「ひどっ!アレは嫁がタンスに入れてたポプリだよ。香水じゃないよ」
「へぇ、でも第一印象は『薔薇の香りのする男』でしたから。大笑いでしたよ。キモいの来た!みたいな?」
「…」
って感じで、不可抗力だった事が判明。
この時には剥がれていたが『薔薇の香りのする男』というレッテルを貼られていた事は伏せておいた。
何故なら、それを貼ったのが私だったからだ。
なんせ、全員に触れ回ったもんなぁ。
「今日面接に来た彼、キモいですよ」
ってね。