02/06の日記

02:47
小ネタ(旅行記IF
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もしも旅に出てなかったら。



神の目を巡る大きな戦いから2年。
俺とリオンは…旅に出る事も無く、リーネに家を建てて暮らしている。


僕らの旅行記IF
〜僕らの生活記〜


「起きろ馬鹿者!」

叫ぶのと同時にフライパンを打ち鳴らすリオンに起こされて、俺はまだ重い瞼を無理矢理持ち上げた。
昔リリスがしていたのにはまだ及ばないにしても、もうすっかり慣れちゃって全く…
いや、それだけ起きない俺が悪いんだけど。

「おはよう、リオン…」

我ながら締まりのない声で挨拶すれば、おそようだ馬鹿がと返されてぐうの音も出ない。
羊の面倒は本来、結構朝早くから見る物だからね。
朝としては普通の時間だけど、そう言った意味では寝坊だ。

「いいから起きて食事をとれ、折角作ったのが冷めるだろうが」

それだけ言って部屋から出たリオンの出て行った方から漂って来るのは、美味しそうなご飯の匂い。
俺があんまり起きないから、一緒に暮らし始めた頃から朝食はリオンが作る事になってるんだけど、ああ見えてリオンは不器用でね。
料理なんか全然出来なかったんだ。
お陰でしばらくは本当にとんでもなく朝飯がマズかったんだけど(それを回避したいと思っても早起き出来ない俺が悲しい)、毎食ちょっとづつ手伝ってもらってる内にコツを掴んで来たらしくて。
最近では普通に食べられる食事を作れるようになったから心底良かったよ。
美味しく出来なくて、リオン自身もすっごい凹んでたからなぁ。
なんて昔の事を思い出していたら、

「スタン!」

いよいよ不機嫌になったらしいリオンが扉の向こうで俺を呼ぶから、俺は慌てて返事をしながらベッドから飛び降りた。



さて。
リーネでは、俺達はリリス達と羊の世話をして生計を立てている。
生活が二重になってる分出費も増えてるんだけど、まぁ村からは滅多に出ないから。
ガルドなんかなくても、あげたりもらったりで生活できるからもうけは考えちゃ無いんだけど。
…生計は立ててないよな、それって。
ちょっと前から『英雄の育った村』とかいう触れ込みで観光地化も進んでるんだけど、それでも宿屋と土産物屋が出来たくらいだし、それだって元々出稼ぎに行ってたボブおじさんが経営してるんだから、実情俺達の生活はあんまし変わってないんだよ。

そんな、のどかで平和な生活。
リリスなんかにはよく聞かれる事がある。
それは、『もう旅にでないの?』って事。

「あれだけ全国旅したんだから、じっとしてられないんじゃないの?」

そう言われるんだけど、俺は首を横に振る。
確かに旅に出たいと思う事もあるよ。
だけど、俺はこの生活が結構気に入ってるんだ。
いろんな所を旅したからこそ、リーネの良さがよくわかる。
昔はよく理解してなかったからね。
そろそろ歳のじっちゃんを置いて旅をするのも不安だし、出るとしてもリリスのお婿さんが決まってからじゃないと。

それに何より…リオンだ。
2年前までこう落ち着いた生活が出来なかったリオン。
この2年、この生活を俺を罵倒しながらも、笑って過ごして来てるんだ。
それは昔は無かった事で、それだけ楽しいって、幸せって事。
だったらもっと味あわせてあげたいと思うだろ?
普通の幸せ、ってヤツをさ。
…へ?
それじゃあ俺個人はとしては旅をしたいのかしたくないのかって?

「俺はリオンと居られれば何でもいいんだ」

このままここに骨を埋めてもいいし、悪人になってもいい。
リオンと居られるなら、俺はそれで幸せだからな。

「…馬鹿だろう、お前」

僕なんかの為に我慢をするな。
そう言いながら、リオンは顔を赤く染めた。

「僕だって…お前と居られればなんでもいいんだ。だから、変な我慢をするな」

サンキュ、リオン。
でも、別に我慢はしてないから気にすんなよな。

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