ケロロ短編

□ケロロ 我儘、我儘ニ
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大金井公園の木陰のベンチで難を逃れた僕は、ふぁーと息を吐きながら背もたれに体を預けた。
自然と顔は上を見上げる格好になっていた訳だけど。
いつかドロロが言っていた自然の気温差が痛感できるなぁ、自然って偉大だよね。
まぁ公園の木なんか植えられたものだから、本当の意味で自然ではないんだけど。
なんて葉の緑をぼんやり眺めていたら、急に頬に冷たい物が触れた。

「ひゃっ?!」

うわわ、変な声が出ちゃったよ。
思わずそれを払い除けて身を起こす。

「っへへ、や、冬樹君」

そこに居たのは、ニヤニヤ笑う623さんだった。
いるかい?と差し出されたのは缶のスポーツ飲料。
さっき頬に当てられたのはこれみたいだ。

「…頂きます」

少し迷ったけど、僕はそれを受け取る。
暑いから水分は余計なくらいとっておきたいしね。
缶を包むように持つ僕をどこか満足げに見つめる623さんは、スッと僕の隣に座る。
僕は思わずたじろいで、623さんは苦笑った。

「隣、駄目?」

「いえ!そんな事は…!」

少し悲しげに聞かれて、僕は首をブンブン横に振る。
駄目じゃない。
でもこの間アリサちゃんの騒動の時にメアド交換してから何か意識ちゃうんだよなぁ。
登録名も623じゃなくて本名だったし…
うん、最近までしてなかったんだよメアド交換。
姉ちゃんすらまだしてないから、知ってるのクルルと僕くらいなんじゃないかな。
…いや、それはともかく。
ラジオのファンでもない僕が言うのも何だけど…623さんは格好いい。
顔や服装は勿論だけど、ちょっとした仕草なんかもつい見惚れるくらいに格好いいんだ。
格好いいし、何でもできるし、人当たりもいいし、でもどこか子供で。
何だか完璧みたいで、一緒にいると何だか構えちゃって。
何でかな、緊張しちゃうんだ。
芸能人どうこうっていうのは僕は全然気にならないんだけどさ。
…ただ、普段それだけ意識しているからなのか何なのか、
今日の623さんは少し様子が違って見えた。
普段はあまりかかない汗が吹き出るように出ているし、頬も少し赤い気がする。
大丈夫かなーなんて気にしだした直後、623さんはずるずると僕の方に体を傾けだして…

「…623さん?」

心配して声をかける頃には、僕の膝の上に倒れ込んでしまった。
え?ど、どうしよう…!


※その頃の軍曹
「ふひぃー…草むしり終了…おのれ夏美殿…」
「ちゃんとやったじゃない!スイカ切ったけど食べる?」
「…………マフーッ!」
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