交易品

□みんなのハロウィン
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〜つばさ編〜


「Trick or Treat!!」

「んー」

「トリックオアトリート!!」

「はいはい」

「とりっくおあとりーとっ!!」

「……」

今朝からアトラスがうるさい。
ずっとTrick or Treatとか言って俺にお菓子をせびりやがる。
話を流し続けてもめげやしないし、このままでは流し先が満杯になりそうだ。
物理的に流してやないから、あくまでイメージ的に。
機会あらばお菓子をせびるのは昔からなんだが、それにしたって昼過ぎだぞ今。
ちょっとしつこすぎやしないか。

…いや、何で今日に限ってこうも言うのかはわかってるんだ。
よりによって今朝のニュースでハロウィン当日特集なんかやってやがったからな。
まぁキリストだ何だがないこっちの世界ではあまり浸透してないイベントだからいい加減な特集だったが。
確か、

『Trick or Treatと言えばお菓子を貰える日』

程度にしか紹介してなかった筈だ。
だからアトラスも言いまくっている訳だが、正規を知ってる俺としては突っ込みどころ満載すぎてどうも。
お菓子をあげる気にはならんね、いや教育的な意味でだが。
そもそもアトラスが言葉の意味を理解しているかも怪しい。

……まぁ理解されたはされたで大変面倒なことになるのは火を見るより明らかなんだが……

意味もわからず言いまくって恥をかかせるよりはいいだろう。
…何よりもう流し続けるのも限界だ。
俺の許容値という流し先が満タンになっちまったからな。

「お前それ意味わかって言ってるのか」

聞いてみれば首を傾げたアトラスは、やっぱりわかってなかったらしい。
…知らない言葉をよく連打できるな。

「Trick or Treatってのはな、"イタズラかお菓子か"って意味なんだよ」

「…何でイタズラ?」

あぁそうか、知らないからそこから説明しなきゃいけないのか。
一応軽くアトラスにもわかるようにかいつまんで説明しておくが…
ハロウィンってのは、神様が降りてくる前最後の日なんだ。
で、オバケがイタズラ納めにって大暴れするって話にかけて、子ども達が楽しむ為にオバケに仮装して街を周る訳さ。

『Trick or Treat!!』

ってな。
まぁ、詳しく言うともっと黒々しい話にまで普及するんだが。
…と、説明すればアトラスは納得したらしく頷いて…
おい、何ニヤニヤしてんだ。

「お菓子はくれない気なんだよね?」

あぁ、昨日食い過ぎたから駄目だな。
じゃあ、と近付いてきたアトラスは、俺をぎゅうと抱き締めると……っておい!?

「…イタズラだもん」

顔を赤くしながらも、触れ合った唇を指先でなぞるアトラスが可愛らしくて、俺はつい抱き締めてしまった。
畜生、何て破壊力のイタズラか。



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