つばさをもつものたち
□早起きの主張
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損してるのか得してるのかわからん。
つばさをもつものたち
〜早起きの主張〜
昨日はかなり遅く寝たというのに定時に目が覚めた。
アトラスが寝た後始まった古い映画が面白くて、つい空が白みだすまで起きていたんだが…
よくもまぁこんな早くに自然と目が覚める物だと自分で呆れてしまう。
だって２時間経ってないぞ。
ちなみに俺より７時間程早く寝たアトラスは、俺の隣で今もまだ夢の世界の中にいる。
しかし、目覚ましの援護射撃もなく定時に起きられるのは社会人としては助かるが、寝坊してもいい日すら勝手に早起きしないでいいだろう、と思う。
特にこういう時は首だって頭だって変に痛むせいで起きているのは辛いんだ。
この症状を俺は寝不足痛と呼んでいる。
そのくせ一度起きてしまうと二度寝できないんだから自分で意味が分からん。
寝ようとしても寝つけないんだから困ったもんだ。
…まぁ朝が弱いアトラスに言わせればそれは
『贅沢な悩みがあっていいねっ！』
という事らしいし可哀想なほど寝起きの悪いアトラスを見ているとそれに同意もするが、だ。
早起きなせいで朝食当番を、ついでにその他家事に至るまで俺が受け持つ事になったんだから文句を言いたくもなるだろう？
「ったく…」
面倒だとかたまには起きろとか文句言いながらも結局朝食を作っちまう俺も悪いんだろうけどな。
なんだかんだでアトラスを起こさないようにベッドから降りる俺は、自分に向けて溜息を吐いた。
朝食を作ってもアトラスは起きてこなかった。
時々匂いにつられて起きてくるんだが…あくまでも時々だしな。
でもまぁ今日は何も予定はないし、アトラスを寝かしてやっててもいいんだが…
起こさないと何で起こさなかっただの冷めた朝ごはんは嫌だだの、あつまさえ
『ジェネは僕のこと、嫌い？』
なんて答えるのが大変恥ずかしくて出来れば避けたい質問に発展する恐れがある。
…質問への途中経過は聞かれても困るぞ。
アイツは唐突に不安にかられるから何とも言えん。
まぁ起こしたら起こしたでもっと寝てたかっただの文句言われるんだろうが……
朝食で誤魔化せるから
『ジェネは僕のこと好きじゃないの？』
なんて聞かれる危険性はまだ低い。
逆のパターンになる可能性は高いが。
はぁ……違う意味でも頭痛いな…
なんて凹んでいても仕方ない。
俺は未だベッドの上で眠るアトラスの元にズカズカ歩み寄る。
……幸せそうな顔して寝てやがって。
何かいい夢でも見ているのか、アトラスの顔はいつも以上に緩みきっていた。
一人で寝てた時のコイツは寝顔がこわばっているのを、俺は良く知っている。
こいつがこんなに緩んだ寝顔をするのは俺と一緒に寝た時だけだと、俺は知っている。
俺は早起きだからな。
毎日のようにコイツの寝顔を見られるのは、多分俺だけの特権だ。
そう思うと頭痛を引きずってまで早起きする体質が好ましく思えてくるんだから俺の価値観は既に崩壊してるんだろう。
早起きがいいんだか悪いんだかわからん。
なんていつまでも見ている訳にもいかないか。
「起きろ、アトラス」
声をかけたら案外すんなり起きたアトラスに
「おはよ、ジェネ」
と笑いかけられただけで頭痛が飛んでいった俺は最早救いようがないな。
朝っぱらからのろけるな、という話だ。
あ、ちなみに。
朝食の最中物の見事に逆パターンになったことを追記しておく。
つまりどういうことかといえば、アトラス好みの朝食にした結果、
「ジェネは僕のこと大好きだね！」
なんて言われたわけだ。
思っても普通言わんぞ、そういう事は。
まぁアトラスだからな。
「うるさい、とっとと食え」
そう言う俺は本当に素直じゃない！
まぁ俺だからな。
それに、あえて言ってやる必要もなさそうだ。
アトラスははいはい、わかってるよなんて笑ってやがるからどうせ顔に出てバレてるんだろうよ。