つばさをもつものたち
□闇は明ける
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脅え続けやしない。続けさせやしない。
つばさをもつものたち〜闇は明ける〜
夜中、急に目が覚めた。
嫌な夢を見たとかそういうのじゃなくて、何か左腕に重みを感じた為だと思う。
寝苦しい感じはしなかったし、目覚めたらそういう状況だったので推測しただけだが。
仰向けで両腕を左右に広げていた俺の左腕の上。
そこには、丸くなって震えているアトラスの額が押し付けられていた。
アトラスからは、くぐもった、しゃくりあげるような声。
泣いていた。
何かに脅えるように、すがるように俺の腕を掴んで。
それでもなるべく迷惑でないように、声を殺して、決して体は掴まずに。
……はぁ、と、俺は胸の内で溜息を吐く。
普段我慢しないくせに、こんな時に我慢しなくてもいいだろうに。
俺は左腕に力を入れて内側に折った。
そのままアトラスを抱き抱える形になる。
丁度仰向けとうつ伏せで向き合った感じだな。
「…え…」
まさか俺が起きたとは思わなかったんだろう。
アトラスは間抜けな声を上げ、丸くした目で俺の顔を見つめた。
ハの字にした眉。止まらない涙。
…辛かったなら言え、と言える立場に俺はない。
俺も同じような物を堪えているから。
でも、我慢できなくなったなら。
「居るから頼れ」
言って抱く腕を強めてやると、アトラスは俺の肩に頭を埋めた。
「…ジェネっ……ジェネぇ……!」
泣き疲れて眠ってしまうまで、俺はそうしていた。