交易品
□クリスマスフリー3つ
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お持ち帰り自由ですよ。
これも、今年でお役御免だな。
つばさをもつものたち
〜サンタへの贈り物〜
サンタクロースとは、人間界における想像上の人物である。
クリスマスイブの夜、空飛ぶトナカイにソリをひかせ、世界中の子ども達にプレゼントを配って回ると言う赤服白髭の老人だ。
いやまぁ最近は必ずしも老人という物でもないようだが、何にしても想像上の人物である以上実在はしない。
しかしながら小さい頃は結構本当に居ると思い込んでしまう物で、かく言う俺も小学の2年までは信じていた。
サンタを見たことはなかったが、毎年クリスマスの朝には枕元にプレゼントが置いてあったからだ。
…そのプレゼントを置いていたのが親だと知ったときの衝撃たるや、半端なかったね。
何も信じられなくなってとまでは行かないが、1日自分の部屋に引き込もるくらいにはショックだった。
そうして、知る。
サンタなんか居やしねぇってな。
ひとつ大人になったと思うも、子どもながらに何かを失った気がしたモンだ。
そして、俺と大体同い年ながらもまだその何かを失っていないヤツが存在する。
アトラスだ。
タマミちゃんだってサンタは居ないとわかっているのに、コイツはいまだ信じているらしい。
いや、信じているのが悪いとは言わないが。
『今年はね、サンタに○箱460貰うんだ!』
なんて楽しみにしてたアトラスにサンタの代わりにプレゼント用意するのは誰だと思ってんだ?
言うまでもなく俺だが。
隠しといたりなんかも含め、結構手間なんだぞ。
サンタなんて居ないんだよと言ってやるのが一番面倒はないんだろうが、アトラスに泣かれかねないから言えないんだよな。
我ながらなんというヘタレ。
……まぁいい。
俺は素直じゃないんでな。
クリスマスプレゼントを気恥ずかしくて渡せない分ここで渡せてるんだ、それでチャラとしようぜ、俺。
そんな訳で。
我が家で至って普通の、ロマンチックさなんぞ微塵もないクリスマスイブの食卓を過ごしたのはもう3時間前。
…何せアニメのクリスマス特番だのケーキがっついたりだのではしゃぐアトラスは完全にガキんちょ化しちまってたんでな。
ロマンチックさなんぞありやしねぇ。
例年はもっとムード出るんだが…
一応これでも恋人同士なんだがな。
あー、まぁそれは置いといて。
俺は、はしゃぎ疲れて先に寝ちまったアトラスを起こさないように寝室に入った。
手には、ほしいと言ってたゲーム機…○箱460だっけか、をサンタの代わりに持ってな。
これを、毎年アトラスが枕元に置いてるサンタへの手紙と交換して…よし、サンタ終了だ。
やれやれ、毎年起きやしないかとヒヤヒヤするんだが、考えてみればコイツは寝起きはとんでもなく悪いからな。
変に緊張する必要ないんじゃないか、といつも後になって気付くから本当に俺も学習しない。
…ちょっと落ち込みながら寝室を出た。
別にそのまま寝てもいいんだが、アトラスの書いたサンタへの手紙が気になってな。
毎年欲しい物とその思いの丈が書き綴られているそれ。
後付けみたいに感謝の気持ちも書かれちゃいるが、かなりおざなりなのがアトラスらしいというか、子どもっぽいというか。
必死さが読んでて面白いんで、地味に毎年楽しみにしていたりする。
アトラスの書く文章なんか、こんな機会でもないと読めないしな。
珍しく封筒にしまわれたそれを開く。
封筒に入ってるんだから文面が数枚になるかという予想はあっさり裏切られ、中身はレター用紙1枚きりだった。
…封筒にしまうなら白紙になっても2枚以上入れるのがマナーだ、なんて細かい突っ込みはこの際置いておこう。
というか、突っ込む余裕はなかった。
内容が、あまりに予想と駆け離れていたからな。
普段なら長々とした文が書かれているそこには、たったの2行。
『いつもありがとう。
ジェネ。』
……あいつめ。
道理で妙にはしゃいでいた訳だよ。
こんな物を用意したんだ。
きっとあいつなりにアガッていたんだろうよ。
もし違ったらとか、来年から貰えなかったらとか、不安がったりな。
そう思うと、いつから気付いていたのか詮索するよりただただ可愛いくて、俺は込みあげる笑いを押さえきれずにくつくつ笑う。
明日はきっとベタベタくっつかれるんだろうけど、それもいいか。