僕らの旅行記

□希望の街
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旅人達の間で噂になっている街がある。
今なお砂漠の広がるカルバレイス大陸において、緑化が外より早く進み、水も豊富な希望の街。
そこには希望しかなく、どんな絶望すら包み込むという。

その街の名は、ホープタウン。

目的のないこの旅において、俺的にはある意味目的地と言ってもいいくらい行きたかった街だ。


僕らの旅行記〜希望の街〜


そして今、この俺スタン・エルロンと、相方のリオン・マグナスは、希望の街ホープタウンの入口にやって来ていた。
地図に載ってないから知らない人もいるだろうけど、位置としてはカルバレイス大陸の西側にあたる。
かつてジャンクランドという大昔のゴミ捨て場があった所だな。

「ジャンクランドは外殻大地の落下で埋め立てられたとは聞いてたけど…」

まさか、ここまで様変わりしているとは思わなかった。
昔は毒ガスやゴミだらけだったのに、今や砂漠の楽園みたいだ。
大きい街ではないけれど…これは首都であるカルビオラより全然過ごしやすいんじゃないか?

「食糧もある、水もある、資源もなくはない。立地がもう少し良ければ首都が変わっていた可能性もあるな」

独自の評価を下したリオンは、その街並みを何か懐かしい物を見るように眺めている。
とりあえず宿に荷物を置こうと提案した時も、リオンは迷わず宿まで先導してくれたし。

…ひょっとして…

「この街も、パラレルワールドにあったのか?」

尋ねれば、リオンはバツが悪そうに頷いた。


俺が死に、リオンが生き返らせられた未来のパラレルワールド。
そこに迷い込んでいた事があるリオンは、パラレルワールドとこの現実がリンクするのを極端に嫌う。
別にパラレルワールドで起こった全てが嫌だった訳ではないんだろう。
ただ、この現実がパラレルワールドで見せられている幻影なんじゃないかと不安なんだとかつてリオンは言った。


だけど今は、それすらも楽しめるようになって来ているフシがある。

「細かい装飾やなんかは違うんだな」

なんて、細かく見ようともしなかった頃からは考えられない発言だしね。

「何かフッ切れたのか?」

聞いたらお前のせいだと笑われた。
逆に、現実がパラレルワールドに影響を出したんだろうと考えたのが、一つ。
これが現実だと俺が宣言したことが、もう一つ。
そして。

「向こうのお前とは"例え死んでいようが呼べば助ける"と約束したからな」

……あぁ、確かに俺なら遺言かなんかで残しそうな約束だ。
それに、もし死んでいたとしても常識やルール全部ネジ曲げてまで助けに行きそうな俺が居て。
いや、むしろ俺なら確実にする。
しかも

「助かったからな」

なんて幸せそうにリオンが言うんだから本当にどうにかしてしまったようだ。
ああどうしよう。
俺の馬鹿さ具合いが嬉しくて、リオンの笑顔がもっと嬉しくて、顔のニヤけが治まらない。

「幸せそうで何よりだねぇ」

…横手からそんな声をかけられた途端、リオンは俺を突き飛ばした。
痛い!

あー…最早お約束だな……



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