短編ごちゃごちゃ

□TOD そうして僕は深みに堕ちる
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お前に僕の何がわかるというんだ。


TOD〜そうして僕は深みに堕ちる〜


「お前は悩みがなさそうでいいな」

何の因果か共に旅をしているヘラヘラ顔に何の脈絡もなく、呆れたように言ってやった。
いや、実際は呆れてなどはいないのだが。
言われた当人である金の長い髪をした、僕より2周りは大きい男、スタンは、何のことかわからないとでも言うように僕を見やる。

「急にどうしたんだよリオン」

僕の名を呼ぶ間抜けな表情が何故か釈にさわったので、我ながら不条理ではあるが長い髪を力任せに引っ張ってやった。
痛いからやめろ?ふん、痛くしたんだ。

「不条理だ…」

全くだ、自分でもそう思う。
そう思うが素直に言ってやる気にはならず、僕はスタンの髪から手を離し、スタンを置いて先へ歩き出した。


実際の所、スタンがヘラヘラしているのは今に始まった事ではなく、出会ったばかりの頃から既にそうだった覚えがある。
そもそもコイツはある女に騙された事で犯罪者となり、僕とその女どもと旅をすることになったのだが、その騙された事に関してはぶちぶち文句を言いつつも、

『まぁ、騙された俺も悪いけどな』

等とヘラヘラ笑っていた。そんな男だ。
とても悩みなんかあるようには見えない。
僕には身動き出来なくなるほどに悩みがあるというのに。
それは人には言えないと言うのに。
だから、僕はスタンに不条理に当たる。
辛辣な事を言うだけでなく、殴ったりもするのに。
何故お前は、僕の前で笑うんだ?
腹立たしい。イライラする。釈にさわる。
人が苦しんでいる時に、そんな風に笑うな。
悩みがなさそうに見えたって、お前も人間だろう。
小さい悩みくらいあって然るべきだろう。
だから、本当に大丈夫そうに笑うな。
僕だけが悩んでいるように錯覚してしまう。
僕は、お前のそんなことですら悩んでいるんだ。
そんな弱い自分が気持悪くてイライラする。
だけど、僕は。
…解っている。ただの八つ当たりだ。
本当にタチの悪い八つ当たりだ。
こいつには僕をわかってほしいだなんて。
何故かはわからないけれど。
あぁ、僕はいつからこんなに女々しくなったのだろう。
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