ケロロ短編
□ケロロ 緊急事用撤退訓練
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さて。
家に帰るまでが遠足ですとはよく言ったもので、家路につく僕は確かに避難訓練の続き…
いや、それ以上に緊張感のある空間にさらされていた。
「……今日は楽しかったよ」
僕の右にはにこやかながらに警戒した睦実さんが居て。
「……それはよかったですね」
僕の左には警戒心を剥き出しにした西澤さんが居て。
「…………」
間に挟まれた僕はどう声をかけて良い物か判らず、うつむき加減にしているしかない。
怖いし変に刺激して大騒動に発展するのは避けたいんだよ。
西澤さんには東谷さんとチケットの奪い合いという前科があるし。
あぁこの場を荒らさず立ち去る方法は何かない物か。
睦実さんには聞きたいこともあるし、出来れば睦実さんとがいいんだけど、この際贅沢は言ってられない。
考えろ、考えるんだ日向冬樹!
「俺は3点でさぁ」
「うふふ、私は2点でした。自慢ですか?」
…2人が僕を挟んで腹の探り合いをしてる今しかチャンスはないぞ!
話題を振られたらきっとうちまで…いや、下手すれば帰りついた後だってこの一触即発な空気から解放されないだろう。
それは辛いし、睦実さんも西澤さんも疲れるだろう。
きっとそれは全員の本意ではない筈だ。
「……はぁ」
気付かれないくらい小さく溜息を吐く。
自分で招いた事態とはいえ、流石に嫌になってきた。
こういう時軍曹ならアンチバリアで逃げられ…ないか、何でかしらないけど僕らには見え……
軍曹?
「あ」
僕が急に声を上げたので、睦実さんも西澤さんも僕に視線を向けた。
それにも構わず、僕は睦実さんに視線を向けると
「最新のマスター…?のガンプラって…」
軍曹が言っていた事をうろ覚えなまま口にした。
唐突に全く関係ない話題が出たからか2人はぽかんと呆気にとられてしまって。
けれどいち早く復帰した睦実さんは何を意図したかわかったらしく、
「マスターグレードの最新はザクキャノンだけど…」
そう、それ!
流石睦実さんは趣味が軍曹に近いだけあって軍曹の話が伝わりやすい。
「軍曹が欲しがってて…」
と言えば、睦実さんは成程ねと頷いて。
「買いに行くならいい店知ってるよ」
どうせ買っといてくれって事だろ、なんて笑いながら僕の手をとり、来た道を戻り出す。
僕は体勢を崩しながらも西澤さんは、と振り向くと、
「私は…ガンプラはわからないので失礼します」
残念そうにしながらも、西澤さんはまた明日、と会釈して。
僕は何とか避難訓練を全うすることに成功したのだった。
あー、緊張した。
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