僕らの旅行記

□希望の街
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「僕は…反対だ」

ナナリーから離れて2人になった所で、うつ向いたまま言うリオンに、

「…何でだよ」

そう言う俺の口調は少しとがってしまったけど仕方のない事だ。

だってそうだろ?

弟を助けたいという気持ちをくまないなんて、冷酷じゃないか。
失望した、と言っていいくらいにはショックだ。
…リオンも好んで嫌だと言っているわけじゃないように見えたから、掴みかかるのは堪えられたけど。

「…僕の知る未来では、ルーは死んでいるんだ」

………え。

「じゃあナナリーの事…」

「知ってるどころか仲間だった」

そりゃあ…リオンもやりづらいだろうな。
でも、それとこれとは話が違う。

「じゃあむしろ、助けたいと思うんじゃないのか!?」

「思うさ!だが…!!」

「だが、何だよ!」

…リオンは視線を伏せたまま、消え入りそうな声で言った。

「ここで助けたら、歴史改ざんをしたヤツらと同じになってしまう、から……っ!」

「…それは…」

…言うことは、理解できる。
知ってる未来を嫌い、望む未来を得るために過去の行いを改ざんすれば、どんな望みも叶えられる。
パラレルワールドのリオン達はそれを良しとせず、戦ったんだ。
それなのに、ここでルーを助けたら…
死ぬはずのルーを助けたら、歴史改ざんになってしまう。
そんな事をしたら戦った意味がなくなってしまうから、助けたくない。

…違うな。
助けるべきじゃない、って思って我慢してるんだ。

でも、さ。

「それとこれとは、違うんじゃないか?」

諭すように言ってやると、リオンはゆっくり顔を上げて。
その、辛そうな泣き顔を見てられなくて、俺はその顔を肩に抱きとめた。

「確かにお前はルーが死ぬことを知ってるかもしれないけどさ」

「…だから、僕は…!」

助けるべきじゃないんだ、というリオンに、俺は首を横に降ってやる。

「…お前が死ぬことを知ってるルーは、違う歴史のルーじゃないのか?」

「……あ……」

リオンが死ぬことを知ってるルーは、リオンが裏切り者にされた歴史のルーだ。
今、俺達が生きているのと違う歴史のルーだ。
それと近い状況になっているけど、ココはそれとは違う時、違う場所。

「だから、改ざんになんかならないよ」

この歴史の俺達は、この歴史の未来を知らないから。
だから助けたら、それがこの歴史の真実になるんだ。

「それにさ」

「…?」

「違う未来すら知らない俺が助けたいって言うんだ。改ざんなんかしようがないよ」

な、と笑って言ってやる。
この一言でフッ切れたらしいリオンは、

「…そうだな」

と笑った後、余計な一言まで付け加えた。

「お前は何を言ってもやると決めたらやる馬鹿だったな」

「そういうお前は思いつめすぎて爆発する馬鹿なんだろ?」

…………

「なんだよ」

「なんだ」

一応怒ったように睨んでいたのに、耐えきれなくなって。
俺達はお互いばーか、とか言いながら大笑いした。
馬鹿は馬鹿同士、お互い苦労かけて申し訳ないね。



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