つばさをもつものたち

□甘ちゃん
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そして今日。
俺は本当に一切食事を作っていなかった。
…や、俺は外食してるが。
意地になったアトラスが自分は悪くないと言って聞かないから仕方がないだろう?
俺が食事を作らないからアトラスは何も食べていないらしく、もう飛び回る元気は無いようで今もソファで力なく横たわっている。
顔色も正直よろしくなく、仮に原因を知らない状態であれば

『何やってんだお前は!』

なんて叫んで怒って食事作ってやるところなんだが今は原因がアレだ。
ここで作ってやってしまっては、アトラスはいつまでも反省しないからな。
それに材料はあるから、アトラスも自分で作ろうと思えば作れる訳で、それをしないんだから自業自得と言うものだ。
別にそこまで料理下手な訳でもないはずだしな!
…と、それはあくまで保護者的見識での話。
正直、今のアトラスの体調が不安でたまらない俺がいる。
2日くらいなら命には別状ない筈とは言っても、いつも無駄に元気なアトラスがコレでは気にかかって仕方がない。
仕方がないがやはり俺が折れるつもりはない。
さてどうするかと悩んだ結果、

「…お前何で何も作らないんだよ」

聞いてみることにしようと結論が出た。
意地を張るのは構わんが、そうまで我慢しろとは言ってない。
俺の方に力なく顔を上げたアトラスは、

「お米がないと嫌だもん」

というわかるようなわからんような理由を口にした。
アトラスは熱狂的米党なのは知っているし、炊飯器は一昨日壊れてから買い換えていない。
成程、と納得しかかったが…やはり変な話だ。

「…鍋でも米は炊けるだろ」

そう。
炊飯器が普及してから一般的ではなくなったらしいが、鍋とか釜でも米は炊ける。
炊けるというか、その方が旨い。
現にうちの実家は未だ釜で米を炊くしな。
……あぁでも一般的ではないからな。

「やり方知らない…」

と、アトラスが言っても全く驚かないけども。
むしろ仕方ないかなーって感じだ。
……あー、本当に仕方ないな。
俺はアトラスをこちらに呼ぶと、台所に立たせた。
何をさせられるか不安そうなアトラスに、俺は米袋をどっかと置いてやる。

「炊き方教えてやるから覚えろ」

「え」

アトラスがきょとんとして隣に立つ俺を見つめる気配があるが、俺は目は合わせない。
許してはないんだぞ、と示しているつもりだが果たして通じているかどうか。

「作ってはやらん、見てられんから教えてはやるだけだ」

実質許してる行動になってるのは理解してるんだが…変に意地もあって真っ直ぐには言えん。
…あー…衝動的な怒りがないから余計に半端な心境で我ながら言葉の意味がわからんな。
自分の言動の不可解さに首を傾げているうちに、アトラスもその不可解さに気付いたらしく吹き出した。

「ジェネってそういう所は子どもだよね」

うるさい。どうせ意地っ張りだ。
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