漂白の間
□きれいなあの娘は造りもの。
2ページ/12ページ
「…で?その話と僕に何の関係が?」
「以前、貴方が虎徹副隊長に作って差し上げた服が女性死神協会メンバーの間で評判でして…」
尸魂界の騒動の後、雨竜は茶渡や織姫たちが現世に戻る時に着る為の服を作った。その際、四番隊のである副隊長の虎徹勇音に頼まれて彼女にも服を作ってやったのだ。
並外れた長身ゆえに体に合う服がなかなか見つからない勇音は大層喜び、何度も礼を言われて雨竜は些か面映ゆかった。
「それで…」
話しながらいきなりネムは自分の胸元に手を差し入れた。死覇装がはだけ真っ白な肌と華奢な鎖骨が露わになる。
「なっ!?ちょ…」
狼狽える雨竜の前にネムは懐から取り出したものを突きつける。
見れば、小ぶりな和綴じのノートのようなもの。
雨竜が恐る恐る受け取って開いてみると、細々と名前や数字やイラストが書き込まれている。
「…松本乱菊、光沢のある生地でセクシー&ゴージャスに?胸を開けたデザイン、身長一七二cm胸囲…ってこれ!…まさか、僕に作れって言うんじゃないだろうな!?」
「お察しの通りです」
しれっとした顔で言ってのけるネムに軽い目眩を覚えながら、雨竜は反論する。
「…あのですね、勇音さんに服を作ったのは、縫製施設を使わせてもらったお礼で…僕は仕立屋じゃないんだよ!十何人分もの衣装頼まれたからってホイホイ縫えると思うのかい!?大体サンタ服なんて今時、何処にでも売ってるだろ!?」
「市販品は種類やサイズが限られていますから。皆さん是非、貴方に作っていただきたいと」
雨竜が強く言い募ってもネムは全く気にした様子もない。
「もちろん、材料費などはお支払いします」
「いや、そういう問題じゃなくて…そもそもクリスマスパーティーだからってコスプレする必要ないでしょう!?」
「会長が楽しみにしておいでですから」
…雨竜は思わず頭を抱えたくなった。この死神は自分が何を言おうがどこ吹く風だ。
「と、とにかくお断りだ。君たちが思う程、僕は暇じゃないからね」
このままではネムのペースに飲まれると見てキッパリと雨竜は断った。
ネムは形の良い眉を僅かに上げる。
「…そうですか。引き受けていただけないのでしたら……」
そう言って、短い裾を気にする風もなく立ち上がったネムの姿が消えた…と思った次の瞬間。
一瞬で距離を詰めたネムが雨竜に迫る!
(!?…しまった…!)
油断を悔やむが躱す間も無く、ネムの腕が雨竜を捕らえ…
むぎゅっ。
…何だかとても温かくて柔らかくも弾力に富んだモノが、雨竜の顔を包み込んだ。
(……………え)
これは……。
この感触と温もりは…。
「…うわわわわっ!?ちょっ…んぷっ!?」
自分の頭が、ネムの豊満な神々の谷間にすっぽり埋もれていることに気づいてしまい。
みるみる耳まで真っ赤になった雨竜は、抱きついたネムを引き剥がそうとするが。その細さからは想像出来ない膂力を持つネムの腕にがっちり首を固められ、身動きがとれない。
それどころか、より強く胸を押しつけられて息が詰まった。