鋼鉄の間

□白きベールの下で
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そして、あの男の椀の底に冷蔵庫から出しておいた苺ジャムを塗りつけ、黒酢を垂らし、更にタバスコをトッピングしてあげてから味噌汁を注ぎ、よーくかき混ぜる。
「完成☆」
我ながら子供じみた嫌がらせだと思う。しかし、表面的にはあくまでもあの男と仲の良いふりをせねばならない
ー僕があの男を悪く言うと、姉さんが悲しそうな顔をするからだー
僕としては、地味な嫌がらせをする事でストレス解消するしかないのである。


「いただきます」
十数分後、やっと甘寧が起きてきて朝食の席につく。
毎朝毎朝姉さんに手間かけさせやがってこの馬鹿男、姉さんの作ったご飯が冷めるだろうが。いっそ永遠に眠らせてやろうか。
心の中で毒づきながら、横目であの男の様子を窺うと甘寧はさっそく味噌汁に手を伸ばしている。
一口啜って、甘寧は目を見開いた。僕はほくそ笑む。

「…うまい…!」
ぼふっ!
吹いてしまった。
い…今なんて言ったこの馬鹿!?本気か!?そうか馬鹿は舌まで馬鹿ということか!僕の作戦ミスだった…!
「凌統は本当に料理上手だな。明日からでも店が開ける」
「そ、そぉか〜?将来は定食屋でもやろっかな」
「…いや、駄目だ。他の男にお前の味噌汁を飲ませたくない…どうしてもやるなら女性限定の店にしてくれ」
「な、何言ってんだかこのば甘寧は〜」

朝っぱらからいちゃつき出しましたよこのバカップル。いや姉さんは可愛いからいいけど甘寧殺したいリアルに。
今日は失敗。しかし次こそは吠え面かかせてやる!
箸を握りしめ、僕はリベンジを誓った。
  
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