無双の間
□温泉へ行こう!
1ページ/16ページ
『温泉へ行こう☆』
〜序章〜
遠呂智軍との激しい戦が続く中、皆で近隣の温泉へ湯治へ行こう!と言い出したのは秀吉だった。
「戦続きで、将も兵たちも疲弊しとる。たまにゃあゆっくり休んで、英気を養わんといかんわ。それには湯治が一番よ」
「うん!お前さま、それはいい考えだねぇ」
真っ先に秀吉の妻・ねねが賛同した。
「…留守の間に遠呂智軍に攻めこまれたらどうするのです?」
と、陪臣の三成はあまり乗り気では無い。
「なに、全員が一度に城を空けんでもええ。代わり番こで行きゃええんさ!行く順番も組ももう決めてあるからな」
ほれ、と秀吉は懐中からリストのような書き付けを取り出して、三成へと差し出す。
「ここに載っとる皆に通達を頼むぞ!三成」
「…やけに準備がよろしいんですね…」
呆れながらも三成が受けとろうとした時、横合いからサッと手を伸ばしたねねが、その書き付けを引ったくった。
「あ、ねね…ど、どうかしたんか?」
何故か、秀吉の顔に焦りの色が浮かぶ。
「ねぇお前さま、一つ訊いてもいい?」
ねねはにっこりと秀吉に笑いかける。
「お市様に、貂蝉に尚香、大喬ちゃんに阿国ちゃん…お前さまと孫市のいる組の参加者は、どうして女の子ばっかりなんだい……?」
「ぎくっ!」
秀吉は青ざめる。
(…またすぐにバレるようなことを…)
今度こそ完全に呆れ返った三成は、目を逸らして溜め息を洩らした。
「お・ま・え・さま?あたしに納得のいくように説明して頂戴?」
ねねは満面の笑みのまま秀吉を問い詰める。
「そ、それは…そうじゃ、おなごは女子同士の方が気楽でええじゃろ?だがか弱いご婦人方だけでは不用心だから、儂と孫市で護衛をじゃな…」
(無理がある言い訳だな…秀吉様と雑賀孫市が一緒の方が、よっぽどご婦人は危ないでしょうに…)
内心ツッコむ三成。
「ふぅ〜ん。じゃ、あたしとお前さまが別々の組なのはどうして?」
「うぐっ、それは、ホレ…儂とねねが一緒に行って仲睦まじゅうしとると、周りの者が目の遣り場に困ると思って…」
いかにも苦しい言い訳を重ねる秀吉。
「そ、それに…三成がねねと一緒に温泉に行きたかろうと思ってな!」
(…はっ!?)
いきなり巻き込まれて、三成は硬直する。
「な、三成!三成はねねと同じ組がええよなっ!」
何とか三成をダシにしてこの危機的状況を脱せねばと、秀吉は必死の形相で迫ってくる。
「三成、そうなの?」
「……ええ、まあ」
…否定したら否定したで厄介なことになるので、仕方なく三成は頷いた。