無双の間

□温泉へ行こう!
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『温泉へ行こう☆』

〜序章〜


遠呂智軍との激しい戦が続く中、皆で近隣の温泉へ湯治へ行こう!と言い出したのは秀吉だった。

「戦続きで、将も兵たちも疲弊しとる。たまにゃあゆっくり休んで、英気を養わんといかんわ。それには湯治が一番よ」

「うん!お前さま、それはいい考えだねぇ」

真っ先に秀吉の妻・ねねが賛同した。

「…留守の間に遠呂智軍に攻めこまれたらどうするのです?」

と、陪臣の三成はあまり乗り気では無い。

「なに、全員が一度に城を空けんでもええ。代わり番こで行きゃええんさ!行く順番も組ももう決めてあるからな」

ほれ、と秀吉は懐中からリストのような書き付けを取り出して、三成へと差し出す。

「ここに載っとる皆に通達を頼むぞ!三成」

「…やけに準備がよろしいんですね…」

呆れながらも三成が受けとろうとした時、横合いからサッと手を伸ばしたねねが、その書き付けを引ったくった。

「あ、ねね…ど、どうかしたんか?」

何故か、秀吉の顔に焦りの色が浮かぶ。

「ねぇお前さま、一つ訊いてもいい?」

ねねはにっこりと秀吉に笑いかける。

「お市様に、貂蝉に尚香、大喬ちゃんに阿国ちゃん…お前さまと孫市のいる組の参加者は、どうして女の子ばっかりなんだい……?」

「ぎくっ!」

秀吉は青ざめる。

(…またすぐにバレるようなことを…)

今度こそ完全に呆れ返った三成は、目を逸らして溜め息を洩らした。

「お・ま・え・さま?あたしに納得のいくように説明して頂戴?」

ねねは満面の笑みのまま秀吉を問い詰める。

「そ、それは…そうじゃ、おなごは女子同士の方が気楽でええじゃろ?だがか弱いご婦人方だけでは不用心だから、儂と孫市で護衛をじゃな…」

(無理がある言い訳だな…秀吉様と雑賀孫市が一緒の方が、よっぽどご婦人は危ないでしょうに…)

内心ツッコむ三成。

「ふぅ〜ん。じゃ、あたしとお前さまが別々の組なのはどうして?」

「うぐっ、それは、ホレ…儂とねねが一緒に行って仲睦まじゅうしとると、周りの者が目の遣り場に困ると思って…」

いかにも苦しい言い訳を重ねる秀吉。

「そ、それに…三成がねねと一緒に温泉に行きたかろうと思ってな!」

(…はっ!?)

いきなり巻き込まれて、三成は硬直する。

「な、三成!三成はねねと同じ組がええよなっ!」

何とか三成をダシにしてこの危機的状況を脱せねばと、秀吉は必死の形相で迫ってくる。

「三成、そうなの?」

「……ええ、まあ」

…否定したら否定したで厄介なことになるので、仕方なく三成は頷いた。

 
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