漂白の間

□ある春の日に
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よく晴れた春の朝。


障子を開け放ち広い庭を眺めながら、白哉は妹を待っていた。



雪白に緋色、紅白の斑、薄紅色。

とりどりの椿が競うように花をつけて、朽木邸の庭を彩っている。


白哉の祖父である朽木家の先代当主が、六番隊の隊長に就いた時に植えたものだ。

己が率いる六番隊を誇りにしていた祖父は、隊花である椿の花もこよなく愛でていた。



(…緋真も、よくここから花を見ていたな)


初めてこの屋敷に連れてきた日。椿を見つめて、緋真は泣いた。

流魂街出身の彼女に向けられた、屋敷の者たちの冷たい視線に心を痛めたのか。


白哉が不器用に慰めようとすると、緋真はそうではないのです…と悲しげに微笑んだ。

「妹を、思い出して」

あの子の誕生花が、椿だったから。


そう言って、顔を伏せた彼女に自分は何と言葉をかけただろうか。


一緒に過ごしたあまりに短い日々。

彼女に、何をしてやれただろうか。



妹と再会させてやることも叶わぬまま。

穏やかな早春の日に緋真は逝ったー…。

 
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