もう一つのオレンジ

□五 雨の記憶
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しばらくそこで真っ青な空を見ていた

流れる雲が美しい

うとうとと

もう少しでまぶたが閉じそうなときだった

「!!」

ガバッ

私は飛び起きた

「虚っっ!!」

しかもかなり近い

とりあえず 気配のするほうへ急いだ









近づくに連れて感覚がはっきりしてくる

・・・だれかが襲われてる

この霊圧は・・・

「夏梨っっ?!」

やばいやばいやばい

一護は気づいただろうか

ルキアは一緒だろうか

私は 戦えるだろうか














「夏梨っっ!!」

どさっっ

「ぅぐ・・・」

飛ばされた夏梨を私は受け止めた

「凛姉!!」

遊子が駆け寄ってきた

「遊子 お前は逃げろっっ!!」

「で・・・でも・・・」

「いいからっっ!!」

「凛姉は・・・あぅ・・・っ」

「遊子っっ!!」

虚の触手だろうか

いきなり遊子の首に巻きついて

小さな彼女の身体を持ち上げた

『わーわーうるさいな・・・

 わしが喰いたいのはこの黒髪のガキだけだ

 いや・・・オレンジのほうがいいか・・・?』

クククと気持ちの悪い笑いが聞こえる

「てめぇ・・・っっ」

絶対ェ殺してやる!!

そう思ってそいつのほうを見た瞬間だった

「・・・ぇ」

こいつ・・・知ってる

「お前・・・母さんを殺した・・・」

あの雨の日 

母さんを肉の塊にした虚

「お・・まえが・・・」

ずっと殺したかった虚

「・・・お前がァ!!」

私は気絶した夏梨をそっと置いて

虚に向かっていった

考えなんてなかった

兎に角憎くて

それだけで

けど

まだ人間(ヒト)の私は非力で

「・・・ぁ・・・」

ズザァ・・・!!

虚の腕に押さえつけられた

「あ・・・ぅぐ・・・っ」

そんな

私はまだこんなにも弱い

悔しくて悔しくて

「・・・ちく・・・しょうっ・・・」

目の前にずっと憎み続けた奴がいるのに

痛みよりも苦しさのほうが上だった

もういっそ 私を殺してくれ

そんなふうに思ったときだった

ザンッ

私を押さえつけていた圧力がなくなって

驚いて顔を上げたら そこには

夏梨と遊子を抱えて真っ黒な着物を着た弟が立っていた

















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