もう一つのオレンジ

□五 雨の記憶
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私の 俺の

心の奥に潜む

どろどろで

真っ黒な

存在









雨の記憶










「はぁ・・・・」

母さんの墓参りのときは

決まって私はここへ来るようにしている

墓を見下ろせる

小高い丘の小さな木の下

家族と一緒に母さんの墓の前に立つのは息苦しくて

だから私は

いつも独りここにいる

さっきは驚いた

墓に着いたと思ったら

ルキアがいた

一護はあわててルキアを連れて

どこかへ消えた

まぁ 私の知ったこっちゃないけど

私は遊子と夏梨と分かれて

すぐさまここに来た










やぁ

母さん久しぶり

今日も近くへはいけないけど

ここからで許してね

いつか

いつか5人で

あなたの前に立つから・・・









「あーーー・・・やば」

遠くの場所から手を合わせた

泣きそう

あの時のことを思い出してしまった

独りで よかった・・・

私は母さんを殺した相手を知っている

今でも忘れない

思い出したくない

あの気持ちの悪い顔

『虚』

生き物の名前だってわかった

殺してやりたい

何度も思った

ぐしゃぐしゃにして

ばきばきにして

母さんと同じ

形のない肉の塊にしてやりたい

止めようのない真っ黒な存在が

溢れ出して

流れ出した








とすっ

私は柔らかな草の上に寝転がった

空が・・・青い・・・

「・・・だから私 虚を殺すのかな・・・」

憎いんだ きっと

一護みたく

助けたいとか

救いたいとか

そんな綺麗な想いで虚を斬ってなんかない

ただただ憎くて

この思いをぶつけたくて

ぐちゃぐちゃにしたくて

「あの虚 まだいるかな・・・」

もしまだあいつが生きていて

私の手で殺せたのなら

この真っ黒な存在は

私の中から消えるかな?













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