もう一つのオレンジ

□壱壱 守と攻
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「・・・っっ」

砂煙が晴れたそこには

大男

それから振り落とされた

これまたおおきな斧を私は片手で受け止めていた

一護の前の存在を確認した私は

弾かれるように地面を蹴り

瞬時に一護の前に立ち

その攻撃を受け止めた

「・・・凛護っ!!」

一護は驚いてそのまま後ろで立ちつくす

ぐっ ぶんっ

私は受け止めた斧を跳ね返す

「・・・なんだよ お前」

そして目の前に立ちはだかる大男を睨んだ

「久す振りだぁ・・・

 通廷書もなすにごの瀞霊門をくぐろうどすだ奴は・・・」

大男はにやりと笑った

「もでなすど小娘!」

そして斧を構える

「・・・なにこいつ 敵?」

私は後ろにいる一護に話しかける

「邪魔すんだから 敵じゃねーの?」

一護はがしゃりと斬魂刀をかつぐ

「そうだな」

私は斬魂刀を構えた

すると

「黒崎くんっ 凛護ちゃん!」

後ろの方から織姫たちが近づいて来る音が聞こえた

でも

「ふんっ」

「わっ」

大男が斧を振り落とす

そのたった一撃で地盤がめくれ上がり

私と織姫たちの間に壁を作った

「お前たづ行儀が良ぐねぇな

 決闘する時は一人ずつだ」

「一人ずつって 俺はいーのかよ」

壁の内側に残された一護が言う

「お前らは似てるがらええんだ」

「おい・・・」

こんな仏頂面の奴と似ててたまるか

私が低く呟くと

「凛護っっ!! 凛護!」

壁の向こうから紅の声が聞こえた

「平気っ? 無事なの?!」

すごく不安そうな声で叫ぶから

「うるさい」

思わずそう言ってしまった

「私も一護も無事だ

 だからそこでおとなしくしてろ」

「・・・やれるの?」

「当たり前だ」

「・・・わかった・・・」

「ふざけるなっっ
 
 なにがおとなしくしていろだ!!」

石田が壁をだんだんと叩く

「星噛くんもっ なに了承してるんだ!

 まったく! 君たち姉弟といったら・・・」

「うるさい 石田」

「なっっ・・・いしっ・・・」

呼び捨てにされた事を心外だというように

石田がつまる

「安心しろ
 
 私は こんなところで死なない」

私は二本の斬魂刀を前で交差させた

「一護も 手ぇだすなよ

 決闘は一人ずつらしいから」

「わかってるよ」

そうして 視線を大男に戻す

「・・・待たせたな

 かかってこいよ・・・」

「ほんどに・・・礼儀がわがってない小娘だべっっ!!」

大きな斧が振り下ろされる

「・・・静まれ 双天華」

ガツンッ

その斧はもちろん私には当たらず

空中にできた壁に受け止められる

「な・・・んだべ これは・・」

見えない障害に 男は動揺する

「これが 私の斬魂刀の能力だよ」

霊子を固めて障害を作る

その形は自由自在

「ぐはははははははははは!!」

大男は笑う

「そうがそうが!!

 なら ごれならどうだ!!」

男がもう片方の手にも斧を握る

ダンッダンッダンッ

次々と斧が振り折らされる

「わぁっっ」

その衝撃が壁の外にまで伝わって

紅焔たちの声がした

ズガシャァァン

最後の一撃で

地面で出来た壁が崩れた

「な・・・なな・・・なんでおめぇ・・・」

それでも私には傷ひとつついていなかった

「・・・だから言っただろ?

 私は こんなところで死なない」

しゃんと斬魂刀を一振りすると

バァン

男の両手にあった斧が弾けるようにして

壊れた

「『壁』にはいろんな使い方があってね

 対象物の周りに壁を作って

 それを一気に縮めると

 その圧力で対象物は崩れ去る」

大男は壊れた斧を見つめてふるふると身体を震わす

「私の勝ちだ」

私はチンと斬魂刀をしまった

それでも男はうずくまってふるふる震えているので

「・・・おい」

傷つけていないのにと不思議になって近づくと

「お・・・おらの・・・斧がぁ・・・」

「・・・・っっ」

男は泣いていた

「え・・・あの・・・その・・・ごめん・・・」

思わず謝る

「あーあ 凛護泣かしたぁー」

「うっうるさい一護っっ!!」

後ろから野次を飛ばしてくる一護を怒鳴る

「わっ悪かったって・・・ 

 なにも壊すことなかったよなっ なっ」

なんとかご機嫌をとろうとする

すると

「おっおめぇ・・・いいやつだなぁ・・・」

「・・・・・・」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を

こちらに向けてくる

「おらはおめぇの敵なのに

 それでも心配してくれるなんて・・・

 なんて器のでけぇ奴なんだ!!」

「いや・・・だって・・・うん・・・」

肩をがしりと捕まれて身動きが取れない

この状況 どうしたらいいんだろう・・・

「完敗だ!! おらの完敗だぁ!!

 おめぇは女なのにすげぇ奴だ!!」

「あ・・・そう・・・ありがとう・・・」

早くその肩の手を離して解放してくれ・・・

「この三百年・・・おらを負かした奴は初めてだ

 通れ 

 白道門の通行を兕丹坊が許可する!!」

「ほ・・・ほんとか?」

あまりにあっさりとしていたので

思わず聞き返してしまった

「あぁ おらは負けたんだ

 お前たずも通ってええど」

そう言って兕丹坊が紅たちを見る

「ほんとーー?」

織姫が嬉しそうに聞く

「おらはお前たづのリーダーに負けたんだ

 お前たづを止める資格はおらにねぇ」

「なっなんで凛護がリーダーなんだ!」

一護がなぜか食いつく

「・・・なんでムキになんてんの・・・」

「凛護って言うだがおめぇ・・・」

兕丹坊がこちらを向く

「あぁ 黒崎凛護だ」

「凛護か・・・えぇ名前じゃねぇが」

「どうも」

名前を褒められるのは嬉しい

私はふっと笑った

兕丹坊は門に手を触れる

「気ぃつけろや 凛護

 ごん中は強ええ連中ばっかだど!」

そうして最後の警告と言わんばかりに

私をしっかり見据えた

「・・・わかってるよ・・・」

「・・・そうか

 わがっでんならええ

 ほら 開けるぞ」

兕丹坊が門の下に手を入れて

「ぬぉぉぉぉぉぉ」

声をあげると

ごごごごごごごご

一気に引き上げた

「おぉぉぉぉぉー」

そのあまりの迫力に

私たちは歓声をあげる

「す・・・すげぇ」

「こんなのが持ち上がっちゃうなんて・・・」

みんなそれぞれ感心する

しかし

「・・・・・・・・・・・・・」

兕丹坊はそのまま固まっている

「・・・ん? どうした 固まって

 何かあった?」

私が尋ねると

「ああああああ」

兕丹坊は顔を真っ青にして言った

「・・・三番隊隊長・・・

 ・・・・・・・市丸ギン」

























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