もう一つのオレンジ

□壱〇 旅立ちの日
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「いつまで無駄話をしとるんじゃ

 貴様らは」

「夜一さん」

すとんとどこからともなく黒猫が現れた

・・・喋る 黒猫

その猫の名を紅は親しげに呼ぶ

「・・・・・・・」

そんな不可思議な猫を私は見下ろす

「なんじゃ娘

 わしも一緒に行くが 文句あるか」

「・・・・ない」

ないなんて嘘だけど

ホントは聞きたい事がものすごくあるけど

なんとなく

それを聞くのを躊躇った

聞いちゃいけないような気がした

「ハイハ−イ 皆サーン

 こっちにちゅうもーく♪」

浦原がパンパンと手を叩く

皆の視線が一気に浦原に注ぐ

「いきますよー」

パチン

浦原が指を鳴らす

すると

ガコンッ

「「っっ!!」」

何もなかった空間に

突然大きな門が現れた

「さ これが尸魂界へ続く門

 穿界門」

「・・・すっげ・・・」

あまりの迫力に

思わず紅が声を漏らす

「よっしゃ!! 

 ささっと行くかぁあっ?!」

今すぐその門に向っていこうとする一護の襟を

浦原が掴む

「そんな急がないでくださいー

 死にますよ?」

浦原の声に深みがかかる

「死ぬ?」

「はい

 穿界門には霊子変換機重ねてあります

 だからこれを潜れば皆サンは難なく霊子に変換でき

 尸魂界へ行けます

 しかし」

浦原は皆を見つめる

「問題は『時間』だ

 我々が穿界門を繋げてられる時間はもって4分

 それをすぎると貴方たちは断界に永久に閉じ込められる

 しかも断界には拘流という動きを奪う気流が満たされている

 それに少しでも触れてしまえば

 終わりです」

「じゃ・・・どうすれば・・・」

織姫が不安そうに呟く

「前に 進むのじゃよ」

不安で一杯の空気の中に

力強い声が響く

夜一

さっきの黒猫

「迷わず 恐れず

 立ち止まらず 振り返らず

 ただ前に進むのみ

 ・・・それが出来る奴だけ・・・ついてこい」

「・・・馬鹿じゃないの」

何を今さら

当たり前じゃないか

「ここに集まった時点でみんな

 そんな覚悟は出来てる」

「あぁ・・・そうだな」

一護がくくく・・・と笑う

「なに 寝ぼけたこと言ってんだ」

その顔は 輝いていた

「分かっているのか 童共

 負ければ二度とここへは戻ってこられぬぞ」

夜一からの 最終確認

「そんなの・・・」

「「勝ちゃいいだけの話じゃねーか」」

こんなときだけ

双子の力を発揮

ぴったりハモる

「・・・その通り」

猫だけど

その時夜一が

少し笑ったように見えた

「では いきますよ

 開いたと同時に駆け込んでくださいっ」

ゴオオオオオオ

と言う音とともに

空間が歪む

門は 開いた

私は振り返り

コンとユキと言う義魂玉に入った

一護と私を見る



・・・いってきます


必ず帰るから

約束するから

それまで

ここを

身体を

家を

・・・よろしく



















いってきます




















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