もう一つのオレンジ

□八 氷の華
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「ここ・・・は?」

ここはどこだろう

身体が重い

動かない

私は目だけを動かして辺りを確認した

どうやら私は布団の中にいる

身体は綺麗に傷の手当がされていて

真っ白な着物を着ていた

まるで死装束じゃねーか

「・・・起きた」

枕元で女の子の声がした

すると障子の開く音がして

「おやぁ ずいぶんお早いお目覚めで♪」

無駄に能天気な声が聞こえた

「・・・ゲタ帽子・・・」

首をぎりぎりまで浮かせて声のしたほうを見ると

あの店主がいた

「はぁ・・・・」

溜息をつきながら私は再び頭を枕に沈めた

「・・・どういうことだ?」

天井を見つめながら問う

「何がです?」

彼はわざとらしく問いを問いで返してきた

「今の状況」

「あー・・・ ここはワタシの家っス」

へらへらと笑いながら言う

・・・確信犯

私はそんなことを聞きたいわけじゃない

コイツはそれを分かってやってる

「・・・・っ・・・・・」

文句の1つでも言おうかと思ったが面倒なのでやめた

それよりもこの状況を早く理解したい

「私はお前に助けられたってことか?」

「そうっスね」

「・・・・・・・・・」

「なんスか その顔
 
 まるで助けて欲しくなかったみたいだ」

「・・・別に

 それより一護は?それと石田って奴も」

「一護サンはまだ目覚めてませんよ

 けど命は助かった」

「一護もここに?」

「えぇ」

「石田は?」

「彼は帰りましたよ

 それほど大した傷じゃなかったんでね

 その場でほとんど治せました」

「そ」

「他には?」

「・・・・・・」

聞こうか 迷った

でもはっきりさせとかないと と思った

「・・・ルキアは」

「帰りましたよ 尸魂界へ」

「かえっ・・・た・・・?」

「えぇ」

「・・・ははっ 帰った?」

乾いた笑いがこみ上げてきた

「連れて行かれたの間違いだろ?」

薄れていく意識の中で見えたあの表情

私の中でくっきりと残っている

苦しそうな 顔

「・・・私はまた なにも出来なかったんだ・・・」

誰にも聞こえないように小さく言った

「彼が 石田サンが言ってましたよ」

今の言葉が聞こえたか聞こえなかったか分からないが

浦原が静かに話し始める

「朽木さんを救えるのは 一護サンとあなた

 彼らだけだってね」

「私たちだけ・・・ね

 馬鹿じゃないの

 ルキアは尸魂界に行ったんだ

 もう手はとどかない

 とどかないのにどう助けるってんだ・・・」

この世界にいれば捜し出して

もう一回戦って

勝つまで死ぬまで戦って

そうすれば救い出せるかもしれない

けど

この世界にもうルキアはいない

とどかない

どうあがいたって

とどかないんだ・・・

ぎちり・・・

掛け布団の下で強く握った拳から血が滲む

「・・・本当にとどかないと思いますか?」

浦原が低い声で言う

「・・・は?」

思わずがばりと布団から起き上がった

「・・・本当に無いと思いますか?」

「なにが・・・」

「尸魂界へ行く方法」

「ある・・・の?!」

「えぇ」

「教えろ 今すぐ教えろ!!」

身体が痛いことも忘れ

がばりと勢いよく起き上がる

「勿論教えますよ

 けど今じゃない

 これからアタシと戦いの勉強しましょ♪」

「はぁ?!

 なんでそんなこと・・・」

ありえない言葉に私は不覚にも声を荒げた

「そんな暇あるわけないだろーが!!

 その間にルキアはっっ!!」

「わかんない人だなぁ・・・」

びっっ!

「・・・っっ!!」

浦原が杖の切っ先を私の目の前に突き出す

・・・なんだこの威圧感は・・・

避けることはおろか

目を逸らすことすら出来ない

冷や汗が伝う

私は震えを隠すためにぎゅと布団のシーツを握り締めた

「今のアナタじゃ彼らには勝てない

 よーく解ってるはずですよ?凛護サン」

「くっっ・・・」

私は少し身体の重心を後ろに引き

より強くシーツを握り締める

悔しいが 返す言葉が 無い

確かに今の私は奴らより遥かに弱い

「そんな顔しなくても大丈夫ですよー♪」

「え?」

急に浦原の声色が明るくなった

それと同時に

息苦しかった圧力がなくなった

「尸魂界は通例極囚の刑の執行までに

 1ヶ月の猶予期間をとります」

「1ヶ月・・・」

「はい 朽木サンの場合も同じはず

 尸魂界へ着いてからや諸々の時間を考えると勉強時間は・・・10日」

「・・・10日 

 10日で私は強くなれるか?」

「はい 勿論

 アナタの気持ち次第で」

「・・・はっ やってやろーじゃん」

やってやるさ

今度こそ

本当の力を手に入れてやる






















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