占いの館へようこそ‡遙か3‡
□占いの館へようこそ!
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翌日、ヒノエと敦盛が助けた女性が店を訪れ昨日のお礼に二人にクッキーを持ってきた。
あの後、駆け付けた警察官に事情を聞かれたが、何故、車が止まったかは分からず、助けてくれた二人は通りすがりの人なのでよく覚えていないと答えてくれたそうだ。
ただ、その場にいた通行人達は二人が去ったあとも、映画のような衝撃のシ−ンに興奮が覚めず、その場で語り合ったり、知り合いにメールや電話で知らせたりと大忙しだったらしい。
彼女は一つだけ聞かせてと言い、
「私がこのピンを忘れなくても助けに来てくれた?」
と、やや不思議そうな顔をして二人を見つめた。
「いや、姫君を救った殊勲者は君が大事にしているこの子かな」
と、ヒノエは彼女の耳元の蝶に触れた。
「…私もそう思う」
敦盛が優しい微笑で同意すると、彼女はそれ以上何も聞かず、「また、手相みてね」と、店を後にした。
「ふうん、忘れ物届けただけでクッキーなんて、さすがね。あなたたち」
よしえは、それだけ言うと、仕事に戻った。
その夜、昨日の出来事が譲の学校でも尾ひれのついた噂になり、
「駅前の交差点に忍者がでて、走ってきた車を投げ飛ばした」
「人を抱えて10メ−トルほどジャンプした」
「忍者は赤い髪の青年と髪を一本に束ねた少年だった」など、いろいろだったらしい。
「母さん!目立つ真似はしないって約束だったじゃないか」
譲はヒノエと敦盛の仕業だろうと、よしえを叱ったが、
「あんた、いくら二人でも車は投げ飛ばせないでしょ!それにそんなにジャンプできる訳ないでしょ。ホント、勉強は出来ても常識ないわね」
と、譲を黙らせた。
そしてまた翌日
この不思議な有川家の母の元、ヒノエと敦盛は今日も占いの館で働くのだった。
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