占いの館へようこそ‡遙か3‡
□占いの館へようこそ!
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「ねぇ姫君、俺の見たことを本当に伝えてもいいのかい?」
「…え?あまりよくない結果なの?」と不安げな顔の女性客、
「いや…よくないのは姫君の運命じゃなくて俺の方かな…」
「…え?」
「…いや。結果をいってしまったらこの手を離さなければならない…そんな運命が訪れるなんてね」
「!!!」
挑戦的と屈託のなさが同居した笑顔の後で、伏し目がちに告げられる言葉は女性客の心を確実に捕らえていた。
一方隣の席では、
「あの?お願いします」なかなか手をとらない敦盛に声をかけるこれまたかわいい女性客、
「ああ…いや。すまない。私が貴女の手をとるなど許されるのかと…躊躇してしまった。では…失礼する」
「!」
白く冷たい手と、その真剣な眼差しは、静かに、女性客の心を捕らえていた。
【占いの館へようこそ!】
ここは占いの館『ア−リ・カ・ヨシェ』。占い師ア−リ(将臣と譲の母・よしえ)の営む店だ。
ひょんなことから現代に来てしまったヒノエと敦盛は、占い助手としてこの店で働かせてもらっていた。
「姫君の運命を見届ける役に俺を選んでくれるとうれしいけどね」
「私の躊躇が貴女を不快にさせていなければよいのだが…また来てくれるか」
本日最後の客を見送ると紫のベ−ルをたくしあげて、よしえは二人に満面の笑みをみせた。
「ヒノエ君、敦盛君、お疲れ様!今日も売り上げは上々よ!」
「よしえさんの前で他の女の手を握るなんて辛いんだけどね。役にたってるならよしとするかな」
「いや私はヒノエほど役にたってはいないだろう。もう少し努力せねば…」
二人の仕事は占い助手。主に付き添いで来店した客の手相を見ることだ。まだ新米なので見料はお客様の″気持ち″分いただくことにしている。
メインは占い師『ア−リ』の星のカ−ドによる占いだったが、最近では二人の対象的雰囲気や、端麗なる容姿が話題になり、手相目当てでくる客も少なくなかった。
「ヒノエくん、敦盛くん」
閉店作業を始めようとした二人に蝶をモチ−フにした髪飾りを差し出すと
「さっきのお客様が忘れていったらしいわ。追いかけて届けてくれる?」
「お安い御用。俺、一人でも大丈夫だけどね」
ヒノエは髪飾りを受け取りすぐさま店を出ようとした、が
「駄目よ、一人じゃ。敦盛君もいってくれる?」
「ああ、では…」
なぜか重みのあるよしえの言葉に、二人は店を出て走りだした。
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