夢浮橋劇場再演
□【さるかに合戦】
【さるかに合戦】
●かに−譲
●さる−鷹通
●栗−望美
●蜂−イノリ
●臼−泰明
●ナレ−ション−泉水
〜開幕〜
譲「先輩、おにぎりよろこんでくれるかな。」
鷹通「これは、譲殿。美味しそうなおにぎりですね。」
泉水『譲殿が道を歩いておりますと鷹通殿がお声をかけました。』
譲「ええ、朝早くから釜で炊いた白米でつくったんです。」
鷹通「実は私、柿の種をもっているのですが、そのおにぎりと交換していただけませんか?」
譲「すみません、これは、ちょっと…。」
鷹通「おにぎりは今、食べたらおしまいですが、柿は毎年その実を食べることができます。悪いお話ではないと思いますが。」
泉水『譲殿はためらっておいででしたが鷹通殿がお腹を空かせているようでしたので渋々、おにぎりと柿の種を交換して差し上げました。』
望美「なんでおにぎりじゃないの?種なんて何年かかるかわかってるの!桃栗三年柿八年なんだよ!譲君のばかぁ〜。」
譲「すみません。先輩。俺、何とかしますから、泣かないでください。」
泉水『望美さんに泣かれ困った譲殿は泰明殿に相談なさいました。』
泰明「問題ない。任せておけ。」
泉水『事情を聞いた、泰明殿は土に埋めた柿の種のまわりに結界をはられました。』
泰明「言霊が成長を促す。毎日語りかけるがよい。」
譲「はい、ありがとうございます。柿の種早く育ってくれよ。」
泰明「それでは駄目だ。」
譲「え?」
泰明「育たねば斬る。」
譲「ええ!」
泉水『泰明殿が語りかけますと柿の種は芽を出しました。』
泰明「楽(がく)にものせると良い。」
譲「は、はい。」
泉水『譲殿は毎日のように、柿の種に歌で話しかけました。』
譲「はやく木になれ♪柿の種〜♪でないと包丁でちょん切るぞ♪」
泉水『瞬く間に柿の芽は木になり実をつけました。』
譲「よし。これを先輩にもっていこう。」
鷹通「譲殿、見事な柿の木ですね。先日のお礼に私が木に登り柿を採りましょう。」
譲「いえ、大丈夫です。これくらい。」
鷹通「それでは私の気が済みません。どうかお任せ下さい。」
泉水『鷹通殿はよたよたと木に登られ、柿の実を譲殿に向けて落としました…が、いっぺんに何個も落としたので、一つが譲殿の顔に当たってしまいました。』
がしゃん!
譲「あ!眼鏡が。」
鷹通「す、すみません。」
泉水『柿が当たり、譲殿の眼鏡が割れてしまいました。』
イノリ「おい、飯はまだかよ!」
泰明「譲は動けぬ。」
望美「もう、今度は何があったの?」
泉水『事情を聞かされましたイノリさんと望美さんは譲殿の食事をいつもあてにしておりましたので大層お怒りになり、鷹通殿の家に乗り込んでしまいました。』
望美「ちょっと!どうしてくれんのよ!私達の晩ご飯!」
イノリ「そうだ!余計なことばっかしやがって。お前は黙って仕事だけしてやがれ!」
鷹通「そ、そんな。すみません。わざとでは…。」
泰明「その者を責めたとて事態は変わらぬ。眼鏡を譲り受ければ良いだろう。」
鷹通「え、そ、それだけはやめて下さい。私が仕事を休めば大変なことに… 。どうか、お願いです。眼鏡だけは…。」
望美「私達はすでに大変なのよ。」
イノリ「そうだ!観念しろ。」
泉水『イノリさんと鷹通殿がもみ合いになり眼鏡が地面に落ちたとき、』
譲「やめて下さい!先輩。イノリも。眼鏡の大切さは俺にも…」
バキッ
鷹通「…。」
イノリ「…。」
望美「…。」
泉水『…譲殿は地面に落ちた鷹通殿の眼鏡を踏み潰しました。』
泰明「仇はとった。帰るぞ。」
泉水『譲殿と鷹通殿は地面に手をつき、長い時間うなだれておりました。』
おしまい
譲「さるとかにである必要があったんでしょうか?」
鷹通「…わかりません。」
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