persona4

□cabbage
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俺は夕飯のメニューを決めかねながらジュネスの生鮮食品売り場を見て回っていた。混雑する時間帯には早いせいだろう、何時もより人気はない。
今日のお買い得商品の放送がスピーカーから流れている。今日はキャベツが62円らしい。

ジュネスは何故だか毎日キャベツの特売をしている。
それはもう特売では無いのではないだろうか、などと考えながら自然と足が伸びて向かった先には見覚えのある寝癖のある猫背気味なスーツの背中が目に入った。積み上げられたキャベツの山を相手に真剣に睨めっこをしている。



「足立さん、いい大人が何してるんですか」

半ば呆れながらため息混じりに声を掛けた。

「あ、月森くん」
奇遇だねー、って何時も会うよね。今日は早いねー部活無かったの?でさー聞いてよ月森くん今日はキャベツが凄い安いから今のうちに買いだめすべきか考えてたんだけどさ、ほら、僕ってとっても忙しいじゃん?だからキャベツ食べる暇が無くて傷んじゃったら嫌だなーって思ってさーどうしようかな? それに僕んちの冷蔵庫小さくって少ししか入らないんだよねー




途中から聞いていなかったが目の前の男は構わずに馴れ馴れしく話し続けている。






「足立さん。」
やっとこちらを振り返った。




「足立さんは俺の目を見ようとしませんよね」




彼の瞳孔の収縮が見えた気がした。















「嫌だなぁ月森くん、人聞きの悪い」
小さく首を振り何事も無かったかのように笑ってキャベツを2つ手に取った。






「このキャベツ、ここ1ヶ月で一番安いよ」
産地直送、と左手のキャベツを投げて寄越すと右手にキャベツを掲げたままここから一番遠いレジに向かって歩いていった。



彼の足元から伸びる影がぐにゃりと歪んで見えた気がした。





















(千切りにして食べてしまおう)

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