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京が寝ようと上着を脱いでいると枕に紙が置いてあった。



紙を手にとって見ると、きれいな達筆でこう書いてあった。






名知無者

川の柳の下の舟であなたが来るのをお待ちしています。

饅頭盗難者









京はその紙をそっと枕の下にいれた







饅頭盗難者って…あのこじきのことか…?


あいつが…
ここに入ってきたんか…?




これは薫くんにゆうた方がええんかな…




どうすればええんや…













その夜、京は一人考えた。


こじきには不思議な魅力があった。



あった日から名もしらない、身分の違うこじき…


ましてや利益をもらったわけではないのに、忘れられないでいる自分がいるという事実。




そして、世を騒がせている本人であるかもしれないという期待と不安が入り混じって京はむしゃくしゃしていた。








京は決めた。







上着を羽織り、こっそりと部屋を抜け出す。






門番には用事があると言って出た。








朝までには帰ろうと決めて馬にのった。




早速目的の場所へ向かおうとしていたが、正直、川の柳…だけではどこを指しているのかわからなかった。


ハメられる可能性もある。


しかしあのこじきの饅頭のことを知っているのは限られた人間である。




京の体は頭をよそに馬を勝手に動かしていた。




あのこじきにもう一度あって話しがしたい。





おかしなことだろう。




自分には利益がないうえに不利益を被る可能性があるのだ。





馬と自分の勘頼りに走る。





たどり着いた場所…






いつの間にか自分のいる場所がどこなのかさえわからなくなっている。











そこは無駄な音がひとつもない、純粋な世界が広がっていた。





鳥の音さえ聞こえない。




ましてやこんなところに人などいるとは思えない。







馬の呼吸の音と風で葉が揺れる音…そして水の流れる音…









水…?














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