会長はメイド様! 短編

□目撃者Kの葛藤
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「おい、碓氷。勘違いってなんのことだよ」

未だ自分の手をマッサージし続ける碓氷に美咲は尋ねた。

「んー?いや、叶がね。多分俺達の声聞こえて勘違いしたんだと思うよ」
「はぁ?お前何が言いたいんだ?意味わからんぞ…」
「だから…」


そう言ってマッサージしていた手を美咲の首筋へと伸ばす碓氷。
そして体を傾けて美咲の耳許に口を近づけて囁いた。

「俺達がやらしーことしてるって勘違いしちゃったんじゃない?」
「なっ…!」


碓氷の囁きに美咲は一気に頬を赤く染め、椅子をひっくり返しそうな勢いで立ち上がった。


「わ、私はただ、マッサージをっ!」
「でもマッサージしてる時の鮎沢の声やらしかったもんねー」


碓氷のその一言に美咲は益々顔を赤らめた。
碓氷も同じように立ち上がり、離れてしまった美咲との距離を縮める。
整った顔が自分の元へと近づいてくるが、美咲は腕を取られて逃げ場をなくしてしまう。


「な、は、離せっ」
「折角だからいっそ…ご期待に添ってあげようか」


真っ赤になって金魚よろしく口をパクパクしている美咲を見つめる碓氷は、更に追い討ちをかけるかのように不適に微笑んだ。


「こ、ここは学校だ!何くだらないこと言ってんだアホ!」
「…でもその“学校”で、叶を誤解させちゃうようなやらしー声出してたのは誰かなー?」
「だから私は別にっ」


碓氷は今にも食って掛かりそうに振り上げられた美咲の手を難なく止め、彼女を上から見下ろして微笑む。


「ま、さっきのは仕方ないとしても、鮎沢のもっと可愛い声は他の誰にも聞かせるつもりはないからね。だから今は…」
「んっ…!」


そう言って碓氷は自分の唇を美咲のそれに重ねる。
突然降ってきた熱さに美咲は抵抗する余地すらもなく、すんなりと受け入れてしまう。
立っているために足がガクガクと震え、目の前にいる碓氷のシャツを掴み、意図なくともしがみついてしまう。


「…ふっ……ん、…ぁ」


角度を変えながら繰り返し送られる熱い熱に、美咲はすべてを持っていかれそうな感覚に陥る。
軽く口内を弄れば美咲の体はピクッと反応し、シャツをにぎる手に力が入る。


「ん〜〜!……っは…はぁ」


美咲が息苦しさを覚えて碓氷の胸を軽く叩けば、碓氷はちゅ、とリップ音を立ててゆっくりと離れた。
目尻にうっすらと涙を浮かべ、息を切らしながら自分を見上げ睨み付けてくる美咲の顔は碓氷にとっては堪らないようだが…


「…足りない?」
「っ、ちが……っは…」
「…でも今はこれで我慢。続きは俺ん家でね。今日はバイトもないよね?」
「…な、んでっ、知って、んだっ」


まだ息の整わない美咲はそれでもたどたどしく言葉を繋ぐ。


「なんでって、そりゃ、俺も美咲ちゃんとシフト同じだしv」


心外とでも言わんばかりの笑顔を浮かべて言う碓氷に呆れて言葉も出せずため息をつく美咲。
碓氷は一旦美咲から離れて机の上に置いてある鞄を片手に持つと、空いてる方の手で再び美咲の手を取り生徒会室の入口へと向かった。


「う、碓氷?」
「早く帰ろ?…で、もっと可愛い声、沢山聞かせてもらうから」
「!…あ、アホ碓氷っ!」


美咲は怒鳴りながらも碓氷から手を離そうとはしない。
生徒会室を出た2人の手はやがて自然とどちらともなくきつく繋がれる。


夕日が照らす放課後の廊下には高さの違う2つの影が並んで揺れていた。



end
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