頂and拍

□甘い反則
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バイトが終わりいつもなら碓氷と一緒に帰る事になるのだが今日は次のイベントの限定メニューについて碓氷と店長が打ち合わせをしていた。
だから私は先に帰る事にした。
だいたい一緒に帰る約束なんてしていなかったし…。
本当は一緒に帰りたい…でも碓氷を待つのも何だか落ち着かない。



店を出て5分ぐらいたっただろうか携帯が鳴った。
碓氷からだ。


『今どこ?』

碓氷のいつもより低い声に驚いた。

「え、駅に向かって歩いているが…」

『そこってまだ店から遠くない?明るい場所?』

「ああ…」

『じゃあ、そこで待ってて。直ぐに行くから』

返事をする前にロッカーをバン!と閉める音共に電話は切られた。




暫くすると碓氷の姿が見えた。
少し怒ったような…拗ねたような…そんな碓氷が息を切らし走って近づいて来る。
私は罪悪感より先に嬉しさが込み上げてきた。

「何?こっちは心配して走って来たっていうのに…こんな顔しちゃって」

碓氷は私の緩んだ頬を軽く突いた。

「しかも走って来た俺より顔、真っ赤だし」

吹き出しながら碓氷が私の真っ赤な頬を両手で包み込んだ。
ひんやりして気持ちいい。

「何で先に帰るかなぁ…」

覗き込むようにして碓氷が言った。

「何でって…一緒に帰る約束なんかしてないだろ!」

「それはそうなんだけど…約束がないとダメなの?」

碓氷はため息をつきながらおでこをコツンとくっつけた。

「い、いや……あの…ご、ごめん」

素直に謝ると碓氷はニヤリと口角を上げた。

「心配させたんだから謝罪は態度で頂きたいなv」

「た、態度って…な、何だよ?」

更に真っ赤になりながら少し後退る。

「あれぇ〜ミサちゃん、何想像したの?」

ますます意地悪くニヤつく碓氷に一発殴りかかろうとしたが伸ばしたその腕を掴まれそのまま抱きしめられた。

「それはまた後でね?」

碓氷のヤツ…耳元でわざと囁いてるだろ?だいたい『それ』って何だよ!

碓氷の囁きが身体中に熱をめぐらせた。

「ここでごめんねのチューをしてもらいたいところだけど…」

「む、無理!」

「だと思うから仕方ないから『拓海、愛してる』って言ってくれたら許してもいいよ?チューとどっちがいい?」

「お、お前…」

私が睨むと碓氷は意地の悪い笑みを浮かべた。

「『お前』じゃなくて『た・く・み』でしょ?」

ムカつく〜〜ッ!

「いくら睨んでも言ってくれるかここでチューじゃないと今回は絶対に許さないよ?」

どっちにしても恥ずかし過ぎるだろ!

私が選択を迷っていると碓氷がため息をついた。

「ミサちゃん…それ反則」

「え?」

意味がわからずキョトンとしてしまった。

「だから…真っ赤な顔して潤んだ目で上目遣いって反則…」

え?何が?私はただ悩んでいただけなんだが…。

「予定変更だね?」

「?」

「ミサちゃんが二度と先に帰りたくならないように『お仕置き』にしようかな?」

碓氷がニヤリと笑った。

「お、お仕置きって…?」

「とりあえず俺の部屋に行こうか、ねぇ〜鮎沢?」

覗き込む碓氷の顔が本気だ…。

「い、いや…ちょっと待て!う、碓氷?」

「う〜ん…待てない。だってミサちゃんが反則するから悪いんだよ?もう止めらんないv」

碓氷は悪戯っぽく笑うと私を引きずるように歩き出した。

でも私の口元は緩んでいた。
だって『お仕置き』って言っても碓氷は私が嫌がる事は一度もした事がない。
優しく優しく…甘い『お仕置き』しか私は知らない。

…お前の方が反則だろ?




End
2010.1.17
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