会長はメイド様! 短編

□目撃者Kの葛藤
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「や…めろ…碓氷っ…」
「なんで?……気持ちいいでしょ?」
「ん…なわけ…あるかっ…」


……;

…み、皆さんこんにちは…
申し遅れましたが1年7組 叶爽太郎です。

…………とんでもないところに遭遇してしました…



【目撃者Kの葛藤】



ことの発端はつい先程。
授業が終わった後に
《今日は生徒会もなくて早く帰れるから一緒に帰ろう》
と幸村先輩から連絡が来たので先輩を待つために玄関へ向かいました。

……いや…、
そのまま真っ直ぐ玄関に向かって、“玄関で”先輩を待っていればこんなことにはならなかったんです…。
担任に用事があったので、(時間もあるし…)と職員室へ向かったのが間違いでした。

職員室から玄関へ向かう途中には生徒会室があり、嫌でも前を通らなければなりません。
生徒会室の前を通るなら、先輩を生徒会室で待っていれば良いや…と先輩に連絡をしたのですが、それはとんでもない大間違いだったようです。

生徒会室なんて役員さんと先生、それから碓氷さんや僕やぐらいしか向かいません(たまに会長の友達が行く時もあるようですが…)
他の生徒は勿論ですが、今日は生徒会がないらしく役員の皆さんの声もせず、とても静かな状態です。

そんな状態なんですからでひそひそ声だって聞こえてしまうんです。
…というか聞こえない方が無理だと思うんですが…

しかも幸村先輩はいません。
……いや、むしろ先輩はいなくて良かったんですがね…


「…鮎沢、力いれちゃダメだって…」
「そんなっ…無理っだ…ぁ」
「大丈夫だから、力抜いて…?」
「いっ…た…ぁ」



!……
こ、この状況は本当にどうしましょう…
中から聞こえるのは碓氷さんと……明らかに会長の声なんですが…(碓氷さんを呼び捨てにする女性なんて会長ぐらいしかいませんし)

に、逃げて良いですかね…
というか、ものすごく逃げたいです!幸村先輩!早く来てください!


「鮎沢…すご…こんなにして…ずっと我慢してた…?」
「っあ…そんな、わけっ…いっ」
「素直じゃないなぁ…ま、そんな鮎沢も可愛いけどね?」
「ぁ、アホな事…言うなっ…!」



……ああああ!
どどどど、どうしましょう!
いくら先輩方のお互いに対する思いに気づいているとは言え、この状況は無理です!
大人しくこんな所に居られる訳がありません!
ゆ、幸村先輩、僕はやっぱり玄関で待ってまs
「あ、叶君!」

!!
…ゆ、幸村先輩……


「ごめんね叶君。先生に書類提出してたら遅くなっちゃって…」
「い、いえ……」


幸村先輩、もう少し声のボリュームを落とさないと中の2人に聞こえ…

「あれ?何か音するけど、中に誰かいる?会長かな…」


た、確かに会長はいますけど先輩ダメですよ!


「叶君、ちょっと待ってて、この書類を生徒会室に置いて来るから」


そう言って生徒会室の扉に手をかける幸村先輩…


……っ!だ、

「ダメです先輩…!」


ガラッ

あああああああ!

「いっ……痛い痛い!やめろ碓氷!」


幸村先輩が扉を開けてしまったことで目の前に見えてしまったのは、役員用の椅子を2つ並べて向き合い、会長の掌を押してる碓氷さんの姿…

……ん?
押してる?


「痛いのは会長の手がガチガチだからだってば…」
「お前がっ!強く押しすぎなんだろうが!」
「ひどいなー会長。人がせっかく掌のツボ押してマッサージしてあげてるっていうのに…」
「だからって痛すぎだ!…お前、前の足裏マッサージ根に持ってんじゃないだろうな…」
「まっさかー。会長じゃあるまいしそんな訳ないじゃん?」
「私じゃあるまいしってどういう意味だアホ碓氷!」





……………えーと…
こ、この状況は……


「ん?…なんだ幸村と叶じゃないか。どうした?」
「!い、いや…その…「会長、先生に今度の会議の書類提出して判子もらってきました」
「そうか、すまないな幸村。生徒会ないっていうのに仕事させて」
「いえ、とんでもありません。それより、碓氷さんはさっきから何をされてるんですか?」


なんの疑いもなく碓氷先輩に尋ねる幸村先輩。
さすがと言うか何と言うか…


「俺?ツボ押しマッサージ。会長、手使いすぎですごく硬くなっちやってるからね」
「痛すぎて敵わん…」


そう言って会長は空いてる方の手で頭を抱えてため息をつく。
ああ、成る程。
掌のツボ押しマッサージですか…
ツボ押し………

……!!


「まぁ…誰かさんは勘違いしちゃったみたいだけどね?」
「はぁ?勘違いだ?誰がだよ」

そう言ってちらりと僕の方を見る碓氷先輩…
さすが先輩…気づいてらしたんですね…



「……幸村先輩、そろそろ帰りましょうか…」
「あ、そうだね。それでは会長、碓氷さん、お先に失礼します」


幸村先輩が出ていった後、碓氷先輩に向けてどうしようもないやりきれない気持ちと共に頭を下げます。本当に申し訳ない…

まともに先輩方の顔を見れないまま、幸村先輩の後を追って玄関に向かいます。
きっと碓氷さんから見れば後ろめたさでいっぱになっているであろう背中をお2人に向けて……



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