タンペン

□全てを
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「真月は…あいつは、バリアンのベクターだったんだ…」

「え…?」


拐われた真月くんを助けに行った遊馬くんに聞かされたのは、そんな言葉だった
嘘だと、そんなはずはないと思った…
明るくて優しい真月くんが、バリアンで、しかもベクターな訳がないと思った
けど、痛みをこらえる遊馬くんの姿はとても、嘘を言っているようには見えなかった


「ど、して…」

「っ!名無しさん…」


なら、どうして彼はわたしと付き合うと言ったのだろう?
何もかもが偽りで嘘だったのなら、どうしてわたしと付き合ったのだろう!


「っ…」


こらえても止められない涙がポロポロと頬を伝う
もう、わたしの涙を拭ってくれる優しい指先はないのに


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

「…彼女は私に任せて。今日は解散としましょう」

「…分かった。名無しさんの事、頼んだぜ?」

「えぇ、もちろんですわ」


膝を折り、大声をあげて泣き出したわたしの肩に、璃緒の細い指先が触れる


「さ、行きましょう。名無しさん」

「う、ひっく…うぅ…」


璃緒に言われるまま、わたしはみんなと別れた
璃緒はわたしが泣き止むまでずっと慰めてくれていた
シャークも、何も言わずにわたしが泣き止むのを待ってくれていた






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