タンペン
□全てを
2ページ/4ページ
「真月は…あいつは、バリアンのベクターだったんだ…」
「え…?」
拐われた真月くんを助けに行った遊馬くんに聞かされたのは、そんな言葉だった
嘘だと、そんなはずはないと思った…
明るくて優しい真月くんが、バリアンで、しかもベクターな訳がないと思った
けど、痛みをこらえる遊馬くんの姿はとても、嘘を言っているようには見えなかった
「ど、して…」
「っ!名無しさん…」
なら、どうして彼はわたしと付き合うと言ったのだろう?
何もかもが偽りで嘘だったのなら、どうしてわたしと付き合ったのだろう!
「っ…」
こらえても止められない涙がポロポロと頬を伝う
もう、わたしの涙を拭ってくれる優しい指先はないのに
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
「…彼女は私に任せて。今日は解散としましょう」
「…分かった。名無しさんの事、頼んだぜ?」
「えぇ、もちろんですわ」
膝を折り、大声をあげて泣き出したわたしの肩に、璃緒の細い指先が触れる
「さ、行きましょう。名無しさん」
「う、ひっく…うぅ…」
璃緒に言われるまま、わたしはみんなと別れた
璃緒はわたしが泣き止むまでずっと慰めてくれていた
シャークも、何も言わずにわたしが泣き止むのを待ってくれていた
.