小説
□暖かい右手、夕暮れ
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思考停止。
慶次くんは、今、なんて?
(…………嘘だ)
有り得ない。
夢か幻か、とにかく現実じゃない。
現実だとしたら、冗談でもやめて欲しい。
期待してしまう。
「……ねぇ、ちょっと。無反応だと悲しくなるんだけど。」
はっ、と意識が浮上する。
慶次くんはしゅーんとした顔でこっちを見ている。
それを見ていると、もうどうでもいいと思えた。
(夢なら、応えても……許されるよね?)
「僕、も………」
「好き、だよ。」
(これが現実だと証明したのは、背中に回った彼の腕の暖かさだった。)
END