- 小説 -


□Promise before Farewell
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しばらくし、乗せてとずっとせがんでいたえりこを乗せ、晶夫は湾岸線へと向かった。
「あ、島さんだ」
「島さんて、誰?」
湾岸線を走っていると、前方に達也の姿があった。
「ほら…ずっと前にいる、真っ黒なポルシェって車だよ」
「ポルシェって、外国の車でしょ?」
「そうだ。今、湾岸であのポルシェが一番速いんだ」
他愛もない会話をしながら大黒PAへと姿を消したその姿を追いかけた。

「島さん」
中心にある塔の横にポルシェの姿があって、晶夫もその隣に駐車した。
「やぁ…」
いつもの短い挨拶の後、ふと助手席に隠れるように座っていたえりこと目が合い、会釈をする。
「アニキ…なんだか怖そうな人…」
「大丈夫だよ、紹介するからえりこも降りなよ」
そう促されるまま、えりこは車を降りた。
「…こんばんは」
「こんばんは。朝倉、彼女は?」
「俺の妹のえりこです」
「このZを見つけた子、だったね」
無言のまま、えりこは頷く。
「…怪我をさせないようにね」
そう晶夫に釘を刺し、明るい売店の方へ達也は歩いていった。
「す、すげーや…」
「何が?」
「何か…島さんに気を遣わせちゃった…」
晶夫は目を丸くしてえりこを見た。
「最近さ、あの人少しずつだけど、俺に話してくれるようになったんだ」
「…やっぱり、ちょっと怖い人なんじゃん」
「その『怖い人』が心配してくれるんだぜ?やっぱ俺の人柄がそうさせるのかな〜」
のん気な兄に呆れながらえりこは、これからも3人の関係は続いていくような、そんな気がしていた。
 
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