- 小説 -


□晶夫のおつかい 中編 3
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「待て!アキオ!」
どれくらい走っただろう。
コンクリートでできた団地脇の公園で、達也は漸くアキオの腕を掴んだ。
「っ…放せよ!」
「放したら逃げるだろお前!」
そう言う達也のギュウと握る力が増す。
それに観念したのか、アキオは息を切らしながら俯いた。
「…なんでだよ…」
「それはこっちの台詞だ」
そっと力の入った手を放す。
「どうした…何があった」
「………」
ムスッと不機嫌な顔をしながら、平淡な口調でボソボソと言葉を発した。
「何でも、ないよ」
「何でもないなら逃げないだろ」
畳み掛ける達也にアキオの声も大きくなる。
「島さんが追いかけてくるから逃げたんだろ!」
「お前が逃げるから追いかけたんだろ!」
「………」
「………」
売り言葉に買い言葉、お互いバツの悪そうな顔を見合わせると、咳払いと少しため息をつき自身を落ち着かせてから達也は口を開いた。
「なぁ…」
「何?」
「…電話、何だったんだよ」
「電、話?」
 
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