- 小説 -


□晶夫のおつかい 中編 2
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横羽線を下り大黒線を経由して、Zとポルシェはまだ交通量も多い湾岸線を北上している。
まるでダンスでもしているように、キビキビとスラロームを繰り返していた。
「すごいなぁ…接地感がまったく感じられない。ポルシェってこんな動き方したっけ…?」
車線変更すらコーナリングに感じられる。
踏み込めば目が追いつくより先に車がワープしている。
そんな状況だったが、相沢はひどくリラックスしていた。
「Zも確かに速い。でも、ポルシェの方がパワーでは勝っているかも」
50メートルほど先を走るZ。
16年前、悪魔のようなパワーを持っていた。
「悪魔だったのは、それだけじゃない…」
確認するようにアクセルを開ける。
「今も、そうやって身をよじるように走るじゃないか」
Zとポルシェ、ドライブしているのにずっと遠くから見ている気がする。
「速さでも、パワーでもない。そんなことで勝ち負けが決められない」
近づいたり離れたりするZと、それを傍観する当事者。
「辛いだろうな…このポルシェのオーナーは。まるで…」
ナトリウム灯の淡い光が2台を包みこむ頃、ポルシェはZの目前にいた。
「…永遠に叶わない恋みたいだ」
台場11号線、レインボーブリッジを通過。
C1外回りへ。
「写真を持ち出したって、答えなんか出てこないよ」
2台はゆっくりと減速を始める。
 
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