- 小説 -


□Your eyes are staring at the ground. 前編
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今日は、達也の家で初めて過ごす夜。
ふかふかの羽毛布団がかなり気持ちいい。
ごめんな、いつもあんな重くて汚い万年床で寝かせちまって…。
布団そろそろ買い替えようか。でも、これくらいいい布団、俺買えねぇ。
金になる仕事拾ってこないとなぁ。
「おやすみなさい、北見さん」
達也の顔ちょっと赤くて、すぐ隣りで目を細めてこっちみて笑ってる。
俺、今人生で一番幸せかも。
「おやすみ、達也」
腕まくらするみたいに達也を抱き締めて、俺達はそのまま眠った。

ふわふわ浮かんでるみたいな、すごく気持ちいい夢を見た。
疲れきった体で熱いお風呂入って『あ〜』って言う時みたいな。
これが夢なら覚めるな。
いや、目が覚めても幸せだから、どっちでもいいや。
あ…なんだか意識がハッキリしてきたようなしないような…。

真っ暗な部屋にほんの少しだけ月明かりが入り込んでいるが、何も見えない。
もぞもぞと動くと、やけに広い。達也がいなくなっていた。
「トイレでも行ったのかな」
しばらく眠い目をこすりながらぼんやりしていると、部屋のドアが静かに開き、達也が帰ってきた。
「達也…」
「何だ、目が覚めたのかい?」
…ん?
なんか違和感が。
 
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