- 小説 -


□さよなら 後編
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「ふーん…」
一通り晶夫が話し終えたところで、アキオが帰ってきた。
「…島さん、来てくれるみたいです」
『………』
「………」
俺は思わず、晶夫と顔を見合わせてしまった。
『ははっ』
「フン…」
笑ってごまかすことしかできない。
「じゃあアキオ、後は頼んだぞ。俺は朝から疲れた」
「北見さん…今夜、待ってますから」
「何で待たれなきゃいけねーんだよ」
そう言うと、真面目な顔がふとほころんだ。
普段あまりそんな顔されないから、なんか変な感じだ。
「俺に何かあったら、北見さん、責任取ってくださいね」
「取るわけねーだろ」
「…ポルシェの前を走るのは、このZだけです。見ていてください」
「…フン」
珍しく力んだアキオの肩をポンと叩くと、ハッとした顔をした。
やっぱり、なんだかんだ言って、こいつも子供なんだな。
「わかってるよ、じゃあな。…おい、晶夫」
『何?』
「Zをぶっ壊したら、タダじゃおかねーからな」
『大丈夫!俺、元オーナーだし!』
「事故って化けて出てきた奴が、何言ってんだよ」
『おっちゃんだって事故ってるじゃん!』
「あ…俺も事故ってます」
「はぁ…」
こんな男3人が、達也の前を走れるのか…?
俺は心底情けなくなった。
「勝たなきゃ成仏しない、なんてオチはないよな」
『成仏しない!』
「…だったら勝ってこい。2度と俺の前に出てくんなよ」
『わかった!』
返事だけは一人前な晶夫。
アキオもこくりと頷いて、俺もその場をあとにした。
 
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