- 小説 -


□Promise before Farewell
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「首都高を周り、つばさ橋まで僕についてきたのは君が初めてだよ」
顔くらいは見たことがある気はしたが、島達也と面と向かって2人で話をするのは、晶夫は初めてだった。
「あっ…」
走りからは想像できない細身な体に驚いたのが、一番強い第一印象だった。
「あの、俺、朝倉晶夫って言います!」
「島達也。よろしく」
達也は運転席側のボディによりかかりZに目をやった。
「君…昔スープラに乗っていたね?」
「ど、どうしてそのことを…」
「仲間…と言えるほどみんな親しくもない、名前を聞くのも面倒だ。だから、車とドライバーの顔だけは覚えたんだ」
「そうだったんですか…」
晶夫は、スープラのこと、Zを手に入れた経緯を簡単に話す。
「このZは…すごいですよ」
「そうだね。君がZに乗って、初めて僕らの前に現れた時のことも覚えているよ」
その場の空気が振るえ、みなZに興味を示し、ある者は高揚し、バランスが崩れていくのを達也は無意識に感じ取っていた。
達也自信もそうであった。
ポルシェのチューンも加熱し、すぐに相当な馬力を手に入れたが、それでも今、晶夫は追い上げてきたのだ…。
「ここまですごい車だとは、僕も思わなかった」
「えへへ…」
なんだか自分が褒められたような気がして、頭をかいて照れ隠しをした。
「もしよかったら…また一緒に走ってください!」
「あぁ」
達也は晶夫の前で、初めて口元に笑みを浮かべた。


次に晶夫が達也にあったのは2日後だった。
その日は達也の後ろを走り、会話もないまま別れたのだったが、晶夫は自分の実力が次第に高まっていくことを実感し、とても満足だった。
 
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