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□ねむらないで
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あたしが大好きだったあの人は夜明けと同時にいなくなった。



いつものように一緒の布団に入っていつものように「おはよう」、と朝を迎える筈だった。

でもあの日の朝は布団の半分がからっぽだった。



まるで初めからそこに誰もいなかったかのように何も残っていなかった。体温すらも。





「ねむらないで。」





あたしの口が勝手にそんなことを言っていた。
今まさしく眠ろうと閉じかけた彼の左目が開いた。

あまり思ってることが顔に出ない人だけどかなり驚いているように見えた。





「大丈夫だ、俺はちゃんと此処にいる。何処にも行かねぇから。」





安心しろ。と、あたしの右手をそっと左手で包んだ。





「…ごめん。」


「謝んな。」





こうして時々、彼の眠りを妨げるあたしを彼は決して咎めたりしない。責めることもない。

あたしを安心させる言葉をくれて手を包んでくれる。それで初めてあたしは眠ることが出来る。



朝日とともに「Good Morning.」と、笑ってくれる彼を楽しみにして。













もう此れ以上お前を傷つけない

もう2度と同じ悲しみを繰り返さない


















―――

Title:水獣

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